愛似恋

 

 

坂田銀時と抱き合うのは、久しぶりの事だった。

土方十四郎は高ぶる思いを押さえ、銀時を見詰めた。

 [コイツといると…
 俺ばっか…
 重たくって…
 なんか…
 考え過ぎて…
 損してる気ィするぜ…
 何だってんだ…]

土方は鬱に思う。

雨に濡れ、滴る雫を払い、銀時は笑う。

「恵みの雨だ
ここん所、乾燥してたモンなぁ」

ご機嫌な銀時が、時に、憎く感じる土方だった。

「ああ、そうだな」

土方はどこと無く、素っ気無く答える。

「ナニ?不機嫌?」

銀時は見ていない様でいて、土方の事をちゃんと見ていた。

「んな事ァねぇ」

着物の帯を解きながら土方は、銀時を見詰める。

「風呂入る?」

「ああ」

裸になった銀時は、不機嫌そうな土方を抱き締め

「ナニ怒ってんの?」

と、聞く。

「怒ってねぇ」

土方は銀時を抱き返し唇を寄せる。

「んぁ…」

銀時は激しく舌を絡ませ、口付けて来る土方に内心笑った。

 [怒ってんじゃあ
 ねぇんだ…
 んじゃ、ナニ?]

銀時はそう思って笑う。

 [コイツは…
 余裕なんだな
 いっつも
 笑ってやがる…]

土方の眉間にシワが一瞬、刻まれる。

 [何だよ…
 ナニ考えてんだよ…
 チューはものっそい
 情熱的なのによぉ]

銀時は強く土方を抱き締め、硬く張り詰めた男根を押し付け、土方の男根に擦り付ける。

銀時の微かな喘ぎは、徐々に高まり、土方の身体をまさぐりながら、小さく、震える。

「トシ…あぁ…十四郎ォ…ンん…」

土方は身体を離し、興奮する銀時を冷静に見詰めた。

「な、ナニ?」

ジッと、見詰める土方を、紅く上気した顔で見詰め返す。

「風呂入るんだろ?」

素っ気ない聞き方に

「あぁ…そう…だな」

銀時は思う。

 [なんだよ…
 なんか、不機嫌じゃね?
 気に入らねぇ事したか?
 アレか?やっぱ
 イヤか?飽きたのか?]

一瞬にして冷めた銀時の態度に気付き、土方は

「悪ぃ、不機嫌なんじゃねぇ、考え事しちまった
済まねぇ」

銀時を引き寄せ、謝った。

銀時は土方を見詰め聞く。

「考え事ったァ
なんだよ
眉間にシワ寄せてよぉ
睨み付けて…」

「済まねぇ、睨むなんて
んなつもり無かった、」

「んじゃ、どんなつもりだよ、イヤならイヤって言っていいんだぜ?」

銀時はボリボリと、頭を掻いて、土方を見る。

「怒ったか?」

「怒ってんのオメーだろ?
俺が入って来るなり
ムッとしたろ」

「そうか
俺ァ、んな顔したか
済まねぇ
オメーはいっつも笑って余裕でよ
俺だけ、重たくってよ
んな事、考えてた」

真剣に言う土方に

「ナニ言ってんだよ
俺に、余裕なんざ
ある訳ゃねぇだろう」

銀時は土方を見詰めた。

「余裕でいれる訳ゃねぇよ
いっつもイッパイ々だよ」

銀時は髪を掻きむしる。

「嘘言うんじゃねぇよ」

「嘘じゃねぇよ
あのな、オメーの気持ちも分かるぜ?
俺がヘラヘラしてんのを余裕ってんだろ?
そうでもしなきゃ
俺ァ自分を押さえらねぇんだよ
オメー、俺が適当に付き合ってるって思ってんのか?」

「イヤ、そんな事ァ
思っちゃあいねぇ」

「だよな、んな事思われちまっちゃあ、オメー
俺ァ、どうして良いか
分からなくなっちまう」

「いいか?土方十四郎
一度しか言わねぇ
オメーが不安気な顔して、告って来た時から
俺ァ、真剣に考えてる
ちゃんとな…
でなきゃ、オメー
男同士でセックスなんざ出来ねぇだろうよ
俺ァ、そんな遊びにゃあ、不慣れなんだよ
誰とでも犯ってる訳ねぇだろう?
オメーだから
土方十四郎だから
付き合ってる
だから
セックスしたい
感じたい」

銀時は一気に告げて土方の胸に手を当てる。

「銀時…」

「多分、俺ァ、オメーが考えてるよか、強くオメーを好きだ
間違い無く、愛してる
ただな、二人して
真剣な顔して、愛し愛され、なんざ、求めちゃいねぇ…
ケドな、こうして確かめる事が必要なら、ちゃんと言う
愛してる、ってな」

「銀時…
俺ァ、勝手な思いを押し付けてたと、思ってた」

「んな事訳ねぇよ?
確かにトシが重たく思ってんの、感じてたケドよォ
だからこそ、俺ァ自分を誤魔化してた
アレだよ?
トシだって、始めに告って以来、ナンモ言わねぇだろう?
ホントの所、どうなんだって、思ってた
今だってよ、もう、俺に飽きたのかと、」

「飽きたりしねぇ…
そうか、そうだな
アレ切りか、俺ァ変わらず、銀時を好きだ
イヤ、前よか、好きだ
愛してる」

「んじゃ、相思相愛か?」

からかい笑う銀時に土方は笑い返す。

「そうか。相思相愛か」

土方は深く感じ入りながら言い、銀時を抱き寄せて

「愛してるぜ。銀時」

と、言い切った。

「ナニ?急に?
なんか吹っ切った?」

土方の肩に腕を回し銀時は笑う。

「ああ、オメーの気持ちがはっきり聞けた
相思相愛と分かった以上、俺ァ、遠慮しねぇ」

「ああん?
オメー、アレで遠慮してたのかよ」

「ああ、」

そう言いながら銀時を蒲団に寝かせた。

「マジでか?」

銀時は重なる土方を驚きの目で見詰める。

「してた。何でだ?」

「イヤ、アレで遠慮してたって
オメー、遠慮無しじゃ、どうなんのかと思ってよぉ」

銀時は困った笑いを土方に向ける。

「何で困った顔すんだ?」

「ああ?オメー、俺ァ
ホラ、ナニ?アレだよ?
オッサンなんだぜ?」

「一つ二つ違うくれぇで
オッサンとか言ってんじゃねぇよ?」

「あんま、激しいとよぉ」

「なんだ?激しいの期待してんのか?」

「してねぇよぉ」

「そうか。そうか
たっぷり可愛がってやっからよ」

土方は銀時無視で口付け、背中と尻を撫で回す。

「んッ、違げぇよ
ンアッバッ
い、入れんなッ
指…ハァん」

銀時はのけ反り、土方はその反応を見て楽しんだ。

「ンアッ、風呂入るんじゃねぇの?」

「イヤ、直ぐ犯りてぇ」

「ん…
なんだっての…
この差は…
オメー、急に…
張り切り過ぎ…」

土方の指は銀時の中で蠢き、慣らす様にゆっくりと揉みほぐす。

「銀時…」

名を呼びながら、土方は銀時の脚を広げ、先走り、滴らす男根を見て笑う。

「ナ…ナニ…」

「先、イキてぇか?」

「んッ、いい…挿れ…ろよ…欲しい…トシ…」

土方は優しく笑い、そっと宛がった亀頭をゆっくりと挿し入れた。

「アア…んッ」

「銀時…堪らねぇ…
銀時…ああ…」

「ナン…だよ…いつもよか…デカクして…」

銀時は土方を強く抱き締め喘ぐ。

「銀時、力緩めてくれ
動けねぇ」

「ああ、動きてぇの?」

「ああ、オメーの中を、な、」

「トシ?エロいよ」

そう言う銀時の方が、艶めいた表情で土方を見ていた。

「オメーのがエロいよ…
つーか、オメーは存在自体がエロいけどな」

「アアん…んな事言うの…
トシだけ…だから」

ゆっくり蠢めく土方のモノに感じながら銀時は喘ぐ。

「もっと…深く…」

「ああ…」

 

 

 

 

 

 

 

旨そうに煙草を燻らす土方の隣りで、銀時はイチゴ牛乳をゴクゴク飲んでいる。

今や恒例となっている土方の土産だ。

銀時にせがまれている内に、買う癖が付いていた。

自然、土方は宿屋に行く途中のコンビニで、必ずイチゴ牛乳を買って来る。

 

「ぷは~!旨ぇえ!」

「よかったな」

土方は嬉しそうにしている銀時を見て笑う。

「風呂入る」

「ああ」

風呂場に向かう銀時の後ろ姿を見て、土方は煙草の火を消し、ゴロリと天井を見上げる。

そして、一人ニヤける。

銀時の自分に対する気持ちを聞く事が出来、満足していた。

愛してると言ってくれた。

それだけで、土方の心は満たされ、来た時に持っていた不安感は消えた。

「幸せってのは、こう言うモンか」

一人、呟く土方。

 

「トシ~?入んねぇの?」

風呂場の方から銀時が声を掛けて来る。

「今行く」

土方は起き上がり風呂場へ向かった。

 

おしまい