銀色の夢【大江戸篇】 壱

 


『土方く~ん?今日、日勤?日勤だよね?
日勤だと良いなぁ~♪
いつもン処で待ってま~す♪』

土方は携帯の留守電メッセージを聞き、身支度整えて”いつもン処”へ向かった。

 

 

 

 

 

宿屋”いつもン処”

入口前に立つ銀時を見付け、土方は首を捻る。

[また、女装なんぞしやがって、何のつもりだ?あのヤロー]

近付くにつれ、いつもとは違う銀時を感じた。

[何だ?随分と、顔付きが妖艶じゃねぇか…
髪も、前ン時とは違う?
本当に、ありゃあ、銀時か?]

「ひっじかったく~ん♪待ってたよ~♪」

手を振る銀時は、やはり、いつもとは、違う。

「おう!何だってまた、ンな恰好してやがる」
「ンフフ、訳あり~」
土方を見る視線は欲情に濡れていた。
「オメー、何か、いつもと違くねぇか?」
「うん、違うねぇ」
銀時は妖しく微笑み、土方を宿屋へ、引っ張り込んだ。

 

 

 


蒲団に押し倒した土方を跨いで伸し掛かり、銀時は
「ンっ、もう、朝からずっと~
我慢してたんだよねぇ~
土方くんがァ~、すっごくゥ~、欲しくてェ~」
笑って告げる。
「珍しい事言うじゃねぇか」
「ホント…
もう、ずっと、濡れ濡れで」
銀時はそう言うと、土方の手を掴み、分けた着物の間から、自分の股間に土方の手を押し付ける。
「あんッ」
ウットリする銀時とは逆に、土方は掌に濡れた女の部分を感じ、驚いた。
「オイ、何だこりゃ?
ねぇ、キンタマねぇぞ!?」
「そうなんだァ、ソレだけじゃナイけっどォ」
銀時は帯を解き、着物を一枚ずつ脱いで、ふっくら丸みを帯びた豊かな胸を露にした。
「触ってみ?」
腰巻を解いて、銀時は妖しく微笑む。
「朝、起きたらァ~、女ンなってた」
「ンな馬鹿な話、ねぇだろが!」
「ンじゃ何だよ、こりゃ?女じゃね?
どっから見ても、女じゃね?
ンでもって、頭ン中、朝からずぅっと!
トシとヤる事しかなかった……
そしたら、もう、トシが欲しくて…欲しくて、濡れて、溢れて、んんっ、はぁん」
土方は指を蠢かしならがら笑う。
「分かったよ…
とにかく、話は後だ。
欲しくて、欲しくて仕方無ぇ、オメーの欲しいモンをくれてやるよ」
土方の掌に濡れた股間を押し付け、自ら擦る銀時に言う。
「う、うん、お願い、」
頬を赤らめ、濡れた瞳で、銀時は土方にしな垂れかかる。
柔らかな躯を押し付けられ、土方は微笑み、ゆっくりと吻付けながら、乳房を掌に包み、柔らかさと、張りのある弾力を楽しんだ。

面白いくらい、銀時の反応は、女だった。

土方は今までに無いくらい、じっくりと銀時の反応、躯を見て取った。

つい数日前に見た、銀時の男らしい肉体は消え、女の肉体に、銀時なのだが、女らしい、しかもエロい別嬪顔が、土方から与えられる快感に喘ぐ。

いつもと勝手は違うが、女の扱いには慣れたモノの土方は、いつも以上に感じ、素直に感情を表に出す銀時を喘がせ、いかせ捲くった。

土方が全身余す所無く、撫で、唇を這わし、舐め、吸う度に、銀時は泣きながら躯を震わせ、喘ぐ。

「悦いッ…」

「もっと…」

譫言の様に繰り返す。

土方はその度、何度も、際限無く求める銀時の欲望に応えた。

 

 

 

 

 

「ンで?何で女ンなったんだ?」
「坂本辰馬っつー馬鹿ヤローから送られて来た酒飲んだらさぁ、朝にゃ女体に大変身だ!」
「誰だ、その馬鹿ヤローは…」
「宇宙飛び回ってる貿易商だけど、マジ、頭空っぽの馬鹿!」
「貿易商のくせぇしやがって、訳分からねぇ品、贈って寄越したのか?」
「ヤツぁホンット!馬鹿だから!
未だ俺の事、金時って呼びやがる!
死ね!クソ馬鹿辰馬!!マジ死ねッ!!」
「坂本とやらの事ァいい。
オメー、他は何ともねぇのか?」
「無い!ただ、ひたすらヤりてぇ!」
土方の上に伸掛かる。
「まァ~だヤんのか?」
呆れる土方に頷く銀時。
「ヤるヤる!ものっそいヤりてぇ!!」
「勘弁してくれ!」
「何だと?他のヤローと犯るぞッ!!
イイのか?犯ってもイイのか?」
かなり真剣な目をして言い切る銀時。
「そりゃあダメだ」
「んじゃ、ヤって、朝までヤってぇ~。
死ぬまでヤってぇ~。お願いぃ~ん」
おねだりに入る銀時に
「オメー、ホント死ぬから……俺が……」
と、土方は呟いて銀時に口付けた。

 

 


以来、毎日、毎晩、会う度にヤり捲った。

 

 


それから一ヶ月近く経ち、男に戻らぬ銀時の危機感を、土方は感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 


―真撰組・屯所・局長室―

「近藤さん」
土方は思い詰めた表情で告げた。
「どうした、トシ」
「屯所を出て、所帯を持つ事に決めた」
「何?所帯?結婚するのか?
お前はモテる男だが、所帯を持つ程に惚れてる女がいたとは、知らなかったぞ。
そうか、そうか、それはめでたい!」
純粋に土方の結婚を喜ぶ近藤は、相手が誰なのか問う。
「万事屋の、坂田銀時」
近藤の驚愕する顔。
「トシィィィィイ!
ナニ言ってんのォォォォォォ?
万事屋のってェェェエ?
銀時は男でしょうがァァァァア!!」
「済まねぇ近藤さん、俺ァ、決めたんだ」
「決めたって、ナニ?
トシ、男だよ?銀時ゃ男だよ?
トシ?聞いてるゥゥゥウ??」
土方は視線を逸らす。
喚き散らす近藤に何の返答もせずに、更に視線を逸らす土方の視線の先に、山崎がいた。

[屯所中にこの話しが広まるのも、あっと言う間だな…こりゃあ……]

土方はそう思いながら用件を聞いた。
「何だ、山崎」
「お話し中、申し訳ありません。副長にお客さんが…」
「誰だ?」
聞き返す土方に
「万事屋のぉ、坂田さん?」
何故か疑問形の山崎。
「通せ」
と、近藤は言い、山崎は土方に困惑の視線を向けた。
土方が頷くのを見て山崎は立ち去る。

「銀時が来たんなら丁度良い。詳しく聞こうじゃないか」
胡座に腕組み、銀時を待つ近藤。

ざわ付く屯所内。

「ヤツ等、何を騒いでる」
部屋に通された銀時を見て近藤は又も驚愕した。
隊員達が騒ぐ理由が分かったからだ。
女物の薄葵の着物姿に薄化粧の銀時は、静かに土方の隣に座る。

「銀時、なのか?」
近藤は土方に聞く。
頷く土方。
「久々じゃね?ゴリさん。元気そうで何よりだ」
口調や態度はそのままに、何処をどう見ても、女にしか見えない銀時がいた。
「ええェェェエ!?」
驚く近藤の正面で
「何しに来た」
小声で文句付ける土方に、銀時は軽く睨んで言う。
「ああん?
ナニって、アレだ、アレ。
オメーが早まったマネしねぇかとだなァ、心配して来たんだろーがァ」
「心配?余計な世話なんだよ!」
「んだとコラァ!
昨夜のオメーの様子が変だから、アレだ、なんか、やる気だなって、俺ァなぁ、」
言い合いを始める銀時と土方。
「待て待て、お前本当に銀時か?」
「ああ?他に誰に見えんだよ!ゴリラ!」
冷たい視線を送る銀時。
「ゴリラっつった?今、ゴリラっつった?」
「言ってねぇ」
空惚ける銀時。
「その口調に態度は、確かに銀時だが…
お前、男だったろ?」
「ああ、今は女だがな」
「女?女なの?だからって………トシ?」
言い続ける近藤を無視して銀時は土方に聞く。
「オメー、ゴリラにナニ言ったんだよ」
「ゴリラじゃねぇ。近藤さんだ。
近藤さんにゃあ、オメーと所帯持つっつったんだよ」
「はぁ?ナニ言ってんの?
馬鹿じゃね?オメー、馬鹿じゃね?」
「んだと、コラ!
テメェ、自分が今どんな状況か分かってねぇから、んな事言えんだよ!」
「何だよ」
「オメーが飲んだ、異郷の酒な、ありゃあ酒じゃねぇ。
雄しかいねぇ生態系で子孫を残す為に、何処だかの惑星で開発された、天人の性転換の薬だって話しだ」
「はぁ?」
「ソレ飲んで女んなったんだ。
その間にヤりゃあ、子孫が残せるって訳だ」
「子孫?んじゃ、ナニ?
ヤり捲った結果、この腹にゃあ、オメーの子供がいるって事か?」
「そう言う事だ」
銀時は自分の、土方、近藤は、銀時の腹を見詰めた。
「トシ、犯ったの?犯り捲っちゃったの?
トシィィィィイ!!」
近藤の叫びと共に、廊下を走り来る音が響く。

ドタドタドタドタ――――ッ!!

スパ―――――ン!!

思い切り走り込み、障子を開いて
「聞きましたぜ土方さん!
アンタ万事屋の旦那と所帯持つ!!
なんてぇほざいてるらしいじゃねぇですかぃ!!
脳ミソ沸いてんじゃねぇか!!
土方ァァァァア!!!」
怒鳴り込んで来た沖田は、銀時を見詰めている全員を見た後、銀時を見て
「アレ?」
と、呟く。
「パー子姐さんじゃねぇですかぃ」
「そ、総悟くん、今、大事な話し、してるから……」
蒼白の近藤に沖田は?顔。

[なんでぇ、こりゃあ?
旦那ァ、女んなってんじゃねぇかぃ。
いってぇ、どう言う事った?]

沖田はじっくり銀時を見詰め、ニヤリ。
「オイオイ、みんなして、パー子姐さんの腹見て何でぃ?
姐さんガキでも出来たんですかぃ?」
冗談半分に言う。
「何で?何で、そう言う事、聡いの?総悟くん?」
近藤は涙零し沖田を見、その思いがけない返答に、沖田が驚愕する番だった。
「ま、マジでか!?旦那に土方さんのガキが?」
滅多に見られない沖田の驚愕振りに土方は笑う。
「土方ァァァァア!!
あんの、クソヤローォォォォオ!!
旦那ァ、土方のヤローに犯られて、ガキなんて、とうとう、こんな事に……
俺ァ、何て言っていいのか、分かりやせんぜ……
クソっ!土方のヤロー!!
何処行きやがったァァァァア!!!!」
沖田は銀時の肩を掴み、怒鳴り捲る。
その沖田の頭を、空かさず
スパ――ン!!
と、叩いた後
「オメー、俺ァ目の前にいんだがなァ
犯り逃げしてどっか行っちまったァみてぇな、人聞きの悪ィ事、言ってんじゃねぇぞ!コルァ!
何にしても、こうなった以上、俺ァ、責任取る積もりだ」
真面目な顔して言う土方に、近藤は頷き、沖田は唖然とした。
「土方さん、マジですかぃ!?」
「つーかさァ、アンタ俺と所帯持つって、本気な訳?
良い笑い者になるだけじゃね?
まぁ、何だ?ガキ出来たとしてだ、別に、なぁ?
俺一人で何とかなんだろ」
内心の動揺を隠し、耳ホジホジ言う銀時。
「なる訳ゃねぇ!
オメーの貧乏生活で子育て出来るか!
生まれる前におっ死ぬぜ!」
土方は怒り気味に言い返す。
「そうですぜ、旦那ァ。
こう見えても、土方さんは高給取りなんでさぁ。
働けなくなった時の事、考えてみなせぇ…
たかり放題でぃ。
生活も楽になりやすぜ?
一緒んなった方が何かと得ですぜ?
今なら無料で、副長の座から引き擦り下ろし!
万事屋店員にしてやりまさぁ!!」
「総悟ォ!後半のオメーの願望は聞いてねぇ!!
とにかくなぁ、良い笑い者だろうが、何だろうが、俺は銀時と所帯を持つ!
それで構わねぇだろ?近藤さん」
「俺?何で俺?銀時に聞いてよ」
困り顔の近藤を見兼ね
「わぁったよ、俺ァ構わねぇよ、俺ん家に引越して来んだろ?
一人暮らしじゃねぇケドぉ、扶養家族ぅ多いケドぉ、そんでも良いってんなら、ど~ぞ~」
銀時は諦め、渋々ながら承知した。

 

 

 

 


―万事屋―

「え~みんなに言っておく事がある。
この前っても先月だが、坂本のクソ!馬鹿!ボケ!カス!死ね!マジ死んでくれ!コンチクショー!!
辰馬が贈って寄越した酒を飲んでぇ、銀さんはァ女になりましたァ」
「マジでか!?
だから銀ちゃん、ずっと女みたいダタか?
仕事場、かまっ娘倶楽部決定ネ!」
はしゃぐ神楽。
「はい、神楽ちゃん静かに聞くよ~に。
ホントの女はかまっ娘倶楽部では働けまっせ~ん!
それで~、何だ~かんだ~、え~、色々あって~、銀さんはァ、どうやら子供が出来た様で~す」
「マジでかァァァァア!?
ヤったんかァァァァア!
そのナリでヤったんかァァァァア!!!!!」
頭抱え叫ぶ新八。
「はい、新八くんも静かに聞くよ~に~!
ちょっ、試したかったんです!
結果、ものっそい、悦かったです!!」
「うおォォォォオ!!
感想なんか聞いてねぇよォォォォオ!!!
アンタもちょっとは考えろよ!
良い年した大人なんだから!!」
「銀ちゃん、銀ちゃん、子供ってナニ?
パピーは誰?誰アルか?教えろヨォ」
神楽、銀時を揺さ振る。
「うるっせぇぞぉ神ァ楽ァ、続き聞けぇ
で、近々、この家に土方くんがァ、引越して来ます。
銀さんとォ一緒に住む事にィ、なりましたァ
以上!!」
「やっぱ土方さんかァァァァア!!
女体になってヤるなァァァァア!!
だから子供出来んだよォォォォオ!!!」
再び、頭抱え叫ぶ新八。
「何ヨ?新八知ってたのかヨ?
ニコ中のマヨラーがパピーアルか?
赤ちゃん可哀相アル」
「神ァ楽ァ!可哀相ってぇなぁなんだ?ああ?
土方くんが来るって事ァなぁ、生活が楽になるって事だ!
ってぇ、沖田くんが言ってましたァ
有り難がれ」
「そうアルか?有り難いアルか!
毎日卵掛けご飯アルか?」
「そうだなぁ、それにパフェ的なモンがありゃあ最っ高ぉだなぁ」
銀時と神楽は想像でウットリしていた。
そこに空かさず新八のツッコミが入った。
「アンタら生活貧し過ぎィィィイ!」
「新八ぃ、オメーもなァ!」
神楽は鼻ホジりながら、新八に言う。
「うるせェェェエ!!
僕だって良い生活したいよ!
卵掛けご飯だって御馳走だよ!」
「そうだ!贅沢言うなァ、って事でよろしく!」
銀時はソファに踏ん反り返って言う。
「神楽ちゃんは、どうする?僕ん家来る?」
「何でか?」
「何でって、土方さんが引越して来るんだよ?
新婚なんだから、ホラ、ね?
色々と大人の事情が、ね?」
「ナニ?H的な事アルか?そんなのワタシ気にしないヨ」
「気にしろよ!
ヤり辛いだろがァァァァア!!」
「ヤるのか?毎ん日ヤるのか?銀ちゃん?」
「ん~?」
「聞いて無いアルか?
ニコ中のマヨラーと、毎日H犯るのか聞いてるアルよ」
「ん~、ヤる!かな?」
「ホラ!神楽ちゃん僕ん家来なよ」
「一日や二日居ねぇ位じゃ、意味ねぇよ?
土方くんが来れば、毎ん日?
まぁ、分かんねぇケドぉ?なんてぇの?
土方くんに会うと、ついついヤりたくなんだよ~、ムラムラするってぇの?」
「一緒に住んだら毎ん日犯るって事じゃねぇかァァァァア!!
教育上良くねぇよォォォォオ!!」
「ごめんね(エヘッ)」
「ごめんね(エヘッ)じゃねぇェェェエ!!」
「新八ぃ怒るなヨ。銀ちゃん悪くないアル。
新婚さん仲良し、当たり前ヨ。
H、H騒ぐオメーが悪ぃんだよ」
「僕かァァァァア!
僕が悪いのかァァァァア!?
何で気ィ使ってやってる僕がわるいんだァァァァア!!
えぇ?神楽ァァァァア!!
聞けェェェエ!!!!!!!!」
神楽は知らん顔してソッポ向く。
「ハイハイ、新八くんうるさいよ~
まぁ、オメーらの生活に支障があろうと、無かろうと、H的な事ァ、遠慮なくヤります!」
「勝手にヤれよ!
誰も止めねぇよォォォォオ!」
「いいヨ。ワタシ気にしないアル。
新婚さん仲良くするの当たり前ネ。
家族増えるの、楽しみアルよ」
「マジでか!?ヤり放題か?」
「ダメですよ銀さん、神楽ちゃんは分かって無いんですよ」
「じゃあオメーは分かってんのかヨ!新八ィ」
神楽のツッコミに、ツッコミ役の新八は黙り込む。
「………」
銀時はニヤリとして新八を見る。
「ワタシだけ知らないアルか?」
「神楽にゃあ、まだ早えぇよ」
「ぬぅ」
膨れっ面の神楽。
新八はこれ以上ツッコまれたく無いので
「夕飯の支度しますね」
と、誤魔化した。
立ち上がり掛ける新八に銀時は告げる。
「あ、イイよ新八。
土方くんに小遣い貰ったからさ、なんか食べに行こう」
「えぇ?小遣いって、土方さん気前良いですね」
「幕臣だよ?天下の真撰組の副長だよ?金持ってんだろ。
ま、正直、今までにも万事屋の経済的危機、救って貰ってました」
「えぇ?そうなんですか?」
「そ~だよ。何とか食い繋いで来れたのァ、土方くんのお陰です」
「マジでか!?有り難いニコマヨ中アル」
「土方様様じゃないですか」
「だろ?頭上がんねぇよ?ん~ナニ食うかなァ?やっぱ食い放題だよなァ、神楽いるしィ?」
「ワタシお茶漬けサラサラ大丈夫ヨ」
「あ、お米あまり無いです」
「んじゃ米買う?」
「そうですね、でも、10kgなんて直ぐ底尽きますから」
銀時、新八共に定春とジャレる神楽を見る。
「だよなァ。
幾ら土方くんが高給取りだって、ウチのエンゲル係数の高さ知ったら、ビビんだろうなァ。
オマケに定春も居るしよ働いても働いてもキリねぇよ?」
「ちょっ、銀さんうちの家計、土方さんに丸々おっ被せるつもりですか?」
「他に誰が出してくれんだよ、腹デカくなったら、アレだよ?俺ァ、働け無いよ?」
「すんまっせん!僕も頑張ります!」
「頼むよ」
「で?ナニ食べに行くアル?」
「「食い放題で!!」」
銀時、新八揃って言う。

 

 

 

 

 

 

―翌日 午後一

土方が荷物を持って万事屋にやって来た。
「邪魔するぜ」
「こっち、荷物こんだけ?少ないねぇ」
銀時は余りの荷物の少なさに、長居するつもりは無いのだろうと思った。
「隊士服と普段着の着物位だからな。
宿直やら夜勤やらで、必要最低限は置いとかねぇとならねぇし、元々、私物は持ってねぇからよ」
土方は少し照れ臭そうに笑った。
「刀は?」
「ああ」
土方は二振りの刀を銀時に渡す。
「刀は床の間、着物はここ、隊士服は…」
次々と荷物を片付けた後銀時は、胡座をかきその様子を見ていた土方の前に座り込む。
「マジで一緒に住むんだ?いいの?」
「ああ」
土方は銀時を抱き寄せ優しく背中を撫でる。
「まぁ、よろしく」
土方の腕の中で銀時は呟いた。
「ああ、ずっと一緒だ」
土方は愛おしげに銀時を抱き締めた。

[こいつ、本気なんだ]

銀時は土方に口付けられながらそう感じていた。

 

 


「パピーアル♪有り難いパピー来たよ♪
毎日卵掛けご飯アル♪」
神楽は土方を拝み
「何言ってやがる。
オメーのパピーは海星坊主だろーが。
それに何だ?卵掛けご飯ったァ」
土方は神楽の隣に座り言い返す。
「誰がワタシのパピー言ったか、オメー銀ちゃんのベビーのパピーだろ。そー聞いたヨ!
卵掛けご飯よろしくアル♪ニコマヨ中♪」
「かぁぐらぁ!
来る早々、土方くんに絡まな~い!
300円あげるから、酢昆布でも買いに行け!!」
銀時は、眉ヒク付かせ言う。
「分かったアル、ごめんヨ」
当の土方は気にした風も無い。
「志村はどうした?」
「新八は買い出し、土方くんの歓迎会やるからさ。まぁ、仲良くやってよ」
「ああ」
土方と話している銀時をジッと見詰め、神楽は考える。

[ホント銀ちゃん女になったヨ。まるでマミーね。ワタシのマミー星になったヨ。ちょっとセンチメンタル]

「何だよ?神楽?ナニ?
見詰めちゃったりして?ん?銀さんの美しさに…」
「マミー!!」
神楽はガバッと銀時に抱き着く。
「誰がマミーだ!!」
銀時はスパーン!と神楽の頭を叩いて言う。
「なんだヨ、ワタシ、ちょっセンチメンタル!!」
抱き着いて離れない神楽を引きはがそうと、もがくが、力の差で無理だった。
「ど、ドメスティックバイオレンスゥ~~!!
わ、分かったから、マミーでも何でも、いーからっ!
放してぇ、神楽ちゃん、苦しい、からっ!!」
「相変わらずだなァ、怪力娘。
大事な躯だ、労ってやってくれや」
土方のセリフに神楽は慌てて手を離し
「ア、アアー!そうアル、悪かったヨ、銀ちゃん大丈夫アルか?」
銀時の腹を撫でる。
「へ?大丈夫だよ?んな気にする程のこちゃねぇよ?
なんだか、みんなして優しいと、ケツの座りが悪ぃってか、オメーらキモい」
「キモいとか言ってんじゃねぇ。親切だろーが。
おう、怪力娘、灰皿ねぇのか?」
「怪力娘じゃないヨ、神楽だヨ!
それと、オメーも銀ちゃん労れヨ!禁煙だぞ!
表にでっかい灰皿、用意してやったヨ」
「そうか、そうだな」
土方は玄関へ向かう。

玄関先に置かれた灰皿は
「オイオイ、こりゃあ、一斗缶じゃね?
地球じゃあ灰皿ったァ、言わねぇぞ」
土方は一人呟いて、煙草に火を点けた。

”カンカンカン”
階段を昇り来る足音。

「あ、土方さん!いらっしゃい。て言うか、お世話になります!」
買い出しから戻った新八がニコやかに言う。
「おう、よろしく頼むよ。で、夕飯何?
つーか、料理出来んの?」
「アハハ、たいしたモノは出来ませんよ。
今日は鍋です、つーか、冬場はひたすら鍋です」
「そっか…」
土方は呟いて、煙草を吸い、新八は家の中に入って行った。

「こいつら、いつも、どんなモン食ってんだ?」
坂田家の食卓事情を思って土方は深い溜め息を吐く。

 

 

 

 

 

 


「洗い立てはクネッてねぇのか」
「ナニが?」
「髪だよ。長いと落ち着いてんだなァ」
「ああ、そうなんだよねぇ、いっそ、このまま、伸ばすかなァ、とね。
ケドさァ、長いと洗うの面倒くせぇし、乾かねぇし、短けぇと天パクルクルだし、まぁ、長くてもクリクリだけど」
髪を梳く銀時の後ろで、土方は笑いながら櫛を取り上げて
「面白ぇ、乾く内にクネッて来たぜ」
銀時の髪を梳きながら、首筋に唇を這わした。
「なぁ、まちっと色気のある寝間着はねぇのか?」
銀時の今まで着ていた男物の浴衣に文句を付ける。
「ああん?オメー、寝間着なんざ、何だってイイだろーが、ナニか?
オメーは寝間着に欲情すんのか?
どーせ裸になりゃあ、ナニ着てたって同じだろーが」
「身も蓋も無ぇ……」
「だったらさァ、好みの寝間着買って来たらァ?
着てあげても良いケドぉん?」
わざとらしい話し方で流し目を送る。
「いや、やめとく……
オメーの言う通り裸になりゃあ寝間着なんざ関係ねぇ」
「んじゃ、脱ぐ?」
「まだ早えぇだろ」
「神楽なら一度寝たら起きないから」
サクサク脱ぎ出す銀時。
「いや慣れたねぇ。
一ヶ月も女やってるとさぁコレがフツーなんだモンねぇ?」
「つーか、オメーこのまま男にゃあ、戻れねぇかも知れねぇぞ」
「そりゃあ子供出来たら戻れねぇだろ」
「いいのか?」
「良いも悪ぃもねぇっての。
どうしろってんだよ、ああ?だいたい、オメーが…」
「なんだ?」
「いや、ホントに子供いんのか?」
銀時は自分の腹を見詰めた。
「今すぐにゃあ分からねぇだろ?
まちっとしねぇと、なぁ?」
と、土方も銀時の腹を見詰め、そっと撫でた。
「いやね、あの酒だか、薬だか、知らねぇケド、ソレ違って、子供出来てなかったら?
やっぱ、早まった事、したんじゃね?」
「今更遅ぇよ。
それにな、あの薬の話しは、天人の学者先生に聞いた話しだ」
「んじゃ確実じゃねぇか。
ま、考えたって仕方ねぇ…ヤる?」
「オメー、ヤる気満々じゃねぇか」
「トシは違うっての?」
腹を撫で回している土方に聞く。
「いや、満々」
土方は笑って銀時に口付けた。
頬に添えた手をゆっくりと、首筋に這わし、肩を撫で、豊かな乳房に這わす。
柔く揉みしだき、固く尖る乳首を指先が掠める。
「…ふっ…んッ…」
重ねた唇から、銀時の甘い吐息に似た喘ぎが漏れ始める。
舌を絡め合う濡れた音、乱れた、甘い呻き。
土方の指が乳首をそっと薙ぎ、丸く転がす。
「あぁんッ…」
銀時は唇を離し、躯をくねらせる。
「感じやすいなぁ……
口付けただけだぜ?」
摘まれ、軽く捻りを加えられ、銀時はのけ反り、直ぐに、土方の頭を掻き抱く。
「もう震えてんのか?まだ何もしてねぇだろうが、ん?」
「トシぃ…」
乳房を撫で、そっと唇を被せられ、舌先が左右に、丸く這う度、銀時は焦れていく。
「アア…ん…」
躯の震えは次第に大きくなり、軽く乳首を吸われただけで、ビクンと跳ねた。
「アア…ダメ……ッ」
今にもイキそうな銀時を笑い、土方は布団に押し倒し、着物を脱いで銀時を見下ろす。
完璧な女の姿態で土方を誘う。
堪らない色香だった。
特別な何かが銀時から漂う。
土方は誘われるままに、銀時に重なった。

「アア…トシ……」
その躯は熱く濡れ、土方の愛撫に感じ入り、震える。
「銀時、大丈夫か?んなに感じて…」
「ンッ…いいッ…も…アソコ…ジンジンする…ぅ…ね、は、早く…来て…ふぅんッ」
四肢を絡ませ、土方を抱き寄せる。
柔らかく、熱く濡れた銀時の中に、熱く猛ったモノを深々と沈めた。
「ンッアぁぁッ…」
強くヒク付き、律動を繰り返す。
「オイ、もうイッちまったのか?」
土方が動く度に強まるヒク付きと震え、銀時の喘ぎは激しくなる。
「いいッ!もっと…もっと、キテ…ああ…ト、トシぃ…」
「す、凄げぇ…なんだ?こりゃあ……」
「ンッンッ!あぁっンッ!トシ…トシぃ…」
身悶え、激しく喘ぐ、銀時の求めに応え、土方は突き上げ、何度となく抱き合った。

今までに無い、銀時の反応を、土方はじっくりと楽しむ余裕があったが、銀時は激しく感じ過ぎ、最後には気を失った。

ぐったりと寝入る銀時の銀色の髪を撫で、乱れを直し、熱くほてる躯を抱き寄せ、土方は微笑み、眠りに就いた。

 

 

 

 

 

「ん…」
「起きたか?」
「ん?ああ、トシ、おはよう」
銀時は寝ぼけ眼を擦り、土方を見上げる。
今まで、泊まる事があっても、夜明け前には家を出で行くのが習いだった土方が、出勤に備え、隊服に着替えている所を見るのは、初めてだった。
「もう、朝?出掛ける時間?」
「ああ、」
土方はしゃがみ込み、躯を起こす銀時の髪を撫で呟く。
「寝るならちゃんと寝間着、着ろよ」
「起きるよ、ああ、腰痛てぇ、」
「無理すんな、昨夜は激し過ぎた、あんま、無茶しねぇ様にするよ」
浴衣を羽織らせ口付けた。
「じゃあな、行って来る」
「待って」
銀時は立ち上がりサッと帯を締め、土方の刀を取り、玄関まで共に出た。

「見送りったぁ、気分が良いなぁ」
「そ?んじゃ、毎ん日する?」
刀を受け取り、腰に差す土方に聞く。
「そうだな。ま、無理無い程度にな」
笑う土方に銀時は笑い返しながら土方を引き寄せ、口付けて
「いってらっしゃい」
と、言う。
「ああ、行って来る」

二階手摺りから下を見下ろすと、山崎が車で迎えに来ていた。

ペコリ頭を下げる山崎に銀時は頷く。

「副長おはようございます」
深々頭を下げる山崎に
「おう」
と、応え土方は、二階の銀時を見上げる。

銀時は手をヒラヒラとさせ、笑顔を向け、車に乗り込む土方を見送った。

これから毎日の日課になるのか、と、銀時は思う。

何となく、気恥ずかしい感がある。

「あっれ?朝メシ、どすんだ?
やっぱ抜きはキツイよなぁ
ナニナニ?毎ん日、俺作んの?
ムリムリムリムリ!
俺、嫁さんじゃねぇし、イヤ、嫁さんなのか?
イヤイヤイヤイヤ…」

「銀ちゃん、うるさいアル、ナニぶつぶつ言ってるか」
寝ぼけ眼で押し入れから出て来る神楽に
「朝メシだよ」
と、深刻に呟く。
「おお、朝ご飯出来てるアルか」
「ちっげぇよ!土方くんの朝メシどすんだ?って話しだよ」
「マヨラーにはマヨネーズアル。ソレで充分ネ」
「ばっか!んな訳にゃいかねぇだろ!」
「知らないヨ、銀ちゃんの旦那さんの事は銀ちゃんが考えろヨ」
神楽は欠伸しながら洗面所へ行ってしまった。

「やっぱ俺、嫁さんじゃねぇかァァァア!!」

「銀ちゃん朝も夜中もうるさいアル」
神楽は一人呟いて顔を洗った。

 

 


「おはようございます」
出勤して来た新八が、遅い朝ご飯を食べていた銀時に言う。
「もしかして、土方さんに朝ご飯作らなかったんですか?」
「土方くんのが起きんの早いんだよね」
「だからって。これからどうするつもりですか」
「ん、分かんねぇ」
銀時はお茶漬けサラサラ掻き込む。
「土方くんも、俺に朝メシなんざ、期待してねぇだろ」
「まぁ、そうでしょうね」
呆れる新八。

 

ジリリリリ
ジリリリリ

ガチャ

「はい万事屋です」
「はい、お久しぶりです。はい、はい、三日間ですね。承知しました」

チン

「ナニ?仕事?」
「はい。大和屋さんのクロミちゃんのお世話を三日間お願いしますって」
「ふ~ん」
「大和屋さん明日から全員慰安旅行なんだそうですよ。
朝早いので今夜からお願いします、との事です」
「あのネコ逃走癖あっから、気ぃ付けねぇとな」

 


「つー事で、新八留守番な。
俺と神楽が大和屋な」
「ええェェェエッ?
銀さん、その服ヤバイって!
乳丸見えだってェェェエ!!
チャック上げてェェェエ!!」
「あがんねぇよ?」
銀時はいつもの服。
身長はそのままだが、女体化したせいで身幅が余り、豊かな胸元が丸見えだった。
「コレ位気にすんな」
「おおォォォォオ!!
銀ちゃんダイナマイト乳アル!」
「イイだろコレで」
「ダメだって!!
そんな格好で出掛けたのバレたら土方さんに殺されます!僕が!晒し巻いてって下さい!」
「面倒くせぇ。行くぞ神楽。じゃあな、新八」
「待ってェェェエ!!」
新八一人取り残された。

 

 

ジリリリリ
ジリリリリ

ガチャ

「はい、万事屋です」
『おう、志村か。銀時いるか?』
「銀さんは神楽ちゃんと仕事に出掛けました」
『仕事?危ねぇのじゃねぇだろうな?』
「大丈夫です。大和屋さんでペットのお守りですから」
『ならいい。俺ァ二三日屯所に詰める事になった。そう伝えといてくれ』
「はい。でも銀さんも帰りは三日後ですから多分、帰宅は一緒くらいだと思いますよ」
『そうか、まぁ、そう言う事だからよ』
「はい、お気を付けるて」

チン

「土方さん、捕物でもあるのかな?」
一人、呟く新八であった。

 

 

―三日後―


―万事屋―

ガラリ

「ただいまヨ~」
「厠、厠、」
チャイナドレスの裾はためかせ、厠に飛び込む銀時に驚き
「アンタァァァア!!
なんて格好で帰って来てんだァァァァア!!」
新八は叫ぶ。

 

ガラリ

「帰ぇったぞ」
土方は居間に入り、鞄と刀を傍らに置き、上着を脱いでソファに腰掛ける。
「土方さん、お帰りなさい」
新八は気が利きで無く、チラチラ厠の方を見る。
「お帰りヨ~」
「おう、仕事はどうだったんだ?」
「クロミちゃんとても良いコだったアル。楽勝ネ」
「そいつァ良かったな」
「お疲れ様です。土方さんの方は大変でしたね、テロリストの逮捕、TVで見ましたよ」
新八は土方にお茶を出し言う。
「ああ、済まねぇな」
お茶を飲み一息つく土方。

「アレ?土方くん、お帰り~」
厠から出て来た銀時の姿を見て土方は、飲んでいたお茶を吹き出した。
「テメェ!なんて格好してやがる!!」
豊満な胸の形も、細く括れた胴も、丸く引き締まった尻の線も露わに、躯のライン、ピッタリに添い、足の付け根まで深くスリットの入ったチャイナドレス姿の銀時に叫ぶ。
「ナニびっくりしてんの?ど?」
ちょっ、自慢気な銀時。
「オメー何で着物じゃねぇ?」
「えぇ?何怒ってんの?
着物着んの、面倒くせぇし、神楽お勧めのチャイナドレスにしただけだケド?
怒ってる意味分かんないンですケド?」
「意味分かんないじゃねぇぞ!コルァ!
テメェ、まさか、そのまま出歩ってたんじゃねぇだろうなァ!?」
ブチ切れ寸前の土方。
「歩ったよ?」
シレッとした銀時。
「銀時ィィイ」
土方は銀時の肩をガッシリ掴み、隣に座らせた。

銀色の夢 四

 


ジッと真剣に見詰める土方に、銀時は小首を傾げる。
「ナニよ?」
「この際だから言っておく。
オメーは今、どっちかってぇと、美人の部類に入る。かなり別嬪だ。
おまけにスタイル抜群で、色気ってぇより、エロい。まるで峰不二子だ」
「またまたァ、んなの言うの土方くんだけだから。そんな事言ったって俺ァ、喜ばないよ?
ナニよ?峰不二子って?」
銀時は土方を笑って斜睨みする。
「銀さん、ホントです。
僕は外見が別嬪でスタイル抜群のエロい峰不二子の銀さんを見ても、中身がグダグダな銀さんだって知ってるから、何とも思わないですケド、大抵のヤロー共は喰付きますから、そのドレスはやめた方がいいと思いますよ。マジ、峰不二子」
長々話す新八。
「どしてヨ?銀ちゃんとてもセクシーアル。
男共みな振り返ってたよ。完璧、峰不二子」
「それがまずいんだよ、神楽ちゃん。
土方さんの気持ちも考えて?
銀さんが峰不二子なんだよ?
ヤロー共が銀さんを、峰不二子を見るみたいに見るんだよ?峰不二子だよ」
「峰不二子な銀ちゃんかっこいいアル!!」
「峰不二子、峰不二子ってアンタら、ルパンですか!俺がそんなエロカッコイイってか?
んな訳ゃねぇ!!
だいたいさぁ、土方くん、ナニ怒ってぇ、心配してるか知んないケドぉ、俺ぁ、浮気はしねぇよ?」
全員を怒鳴り散らした後、土方に言う銀時。
「んな心配じゃねぇ」
「んじゃナニよ?」
土方は銀時の手を引いて和室に入って行った。

 

「オメー、その下、ノーパンだろーが」
「昔の人はみんなノーパンだったンだよ?
やっぱ俺ァ古風にだなぁ」
「テメェのノーパン談議はいらねぇッ!
んな格好して歩ってみろ!
ハイエナ寄せ集めてんだろーがァ!!」
「ああ、そっち?
大丈夫だよ、簡単に他のヤローに犯らせますかってんだよォォォオ!」
「じゃあ、まちっとマシな格好しろや。
オメーが男ん時ゃ、んな事ァ考えた事ァねぇ。
だが、今は女の身。
ましてや、俺の子を孕んでる。
心配するなっても無理だ。
オメーが強い男だってのは分かってる。
だが、今も同じとは、限らねぇ……
オメーに何かあったら、俺ァどうしたら良い…
なぁ、銀時」
「トシ」
銀時は土方を抱き寄せ、口付ける。
「あのさぁ、アンタ、本気で俺の事、好きなんだ。
まぁ、俺もトシの事ァ、大好きだけど」
銀時は土方を押し倒し
「それにさぁ、俺がエロい気持ちになって、欲情すんの、トシにだけだから、ここ濡れんのも…」
銀時は妖艶に微笑みながら、土方の手を自分の股間に持って行こうとする。
「銀時、見てる、見てる、聞かれてる」
銀時は開け放たれたままの襖を振り返って、新八と神楽が覗いているのを確認した。
「見てんじゃねぇぞ!」
「ヤッてんじゃねぇよ!!
まだ早い時間なんだからァァァァア!!!」
新八は叫ぶ。
「時間関係無いから、あっち行っててくんない?
銀さん今、ものっそい土方くんにチュ~したい気分だから」
土方の頬に唇寄せる銀時。
新八、神楽は襖を閉め、去る。
「オイ、銀時、俺ァ片付けなきゃならねぇ書類があんだ」
「ああん?チュ~する時間くらいあんだろ」
銀時の希望通り、口付けを交わした土方だったが、あまりにも情熱的なもので、銀時の躯を撫で回して、胸を揉みしだいてしまった。
「あぁん、乳首摘んじゃダメだってぇ」
「あ、悪ぃ、ついな、つい」
起き上がる二人。
「やっぱ、まちっとマシな服買え」
「服なんてどーでも良いんだケドさぁ、トシがどーしてもってんなら」
「どーしてもだ!頼む」
土方が頭を下げたのを見て
「分かった」
銀時は返事をしつつ、土方に寄り掛かる。
「話し違うんだケド、朝メシ、どうすりゃいい?」
「朝メシ?ああ、早目に出て屯所で食うから良い。
どうせ、起きられねぇだろ」
「起きられねぇとか言うな!
…あ、やっぱ、無理?」
「オメーに朝メシなんざ期待してねぇ」
「だよな…まぁ、見送りは毎ん日するよ」
土方は笑って頷く。
「オメーそりゃ、信じてねぇな!?」
「どうかな?
まぁ、ソイツは期待しとくよ。頑張れ」
「励まされたよ…
しゃーねぇ、頑張るしかねぇな」
銀時は笑って土方に口付けた。

 

 

それから、銀時と土方は普通の夫婦の様に暮らしていた。

 

クリスマスは万事屋で(土方の金で、仕事の土方ほっぽらかし)パーティーをし、帰宅した土方と銀時は深夜にデート。

 

神楽を新八ん家に追い払い、二人切りの年越し、正月。

 

二日目には、年始の挨拶にきた新八と帰って来た神楽は、万事屋に勤めて初めてのお年玉を、土方から貰った。

 

 

 

 

 


―数日後―

目覚めた銀時は何かが違う、と 、感じていた。

[躯が、痛ぇ…何だ?
ヤり過ぎか?
そりゃあ、いつもの事か…]

相変わらず毎晩、犯り過ぎていた。

何気無く触った自分の躯が、自分のモノでは無い様に感じた。

[アレ?アレ?アレレレレ?]

ガバッと起き上がる銀時の隣で、土方が身動きし、目を覚ます。

「どした…」
「トシぃ…俺ァ、喜んで良いのか、悲しんで良いのか、分からねぇよ……」
銀時のセリフに土方はマジマジと銀時を見た後、深い溜め息を吐いた。
「まぁ、良かったんじゃねぇのか?
男に戻れたんだ」
「良かったのか?ホントに?良かったのか?
だってよー、俺ァ、アレ、この三ヶ月近く、女で、んで、ナニ?
トシの子が居んのかって、何だか、訳の分からねぇ感情に、こう、変な盛り上がりがあってよぉ…
すっかりその気になってたってぇか……なぁ…トシ」
銀時は茫然とした様子でブツブツと、呟く。
「ああ、分かってるよ、正直、俺も、どうしたモンか、分からねぇ。
ただ、銀時の言いたい事ァ分かる」
土方はそっと銀時を抱き、背中を撫でた。
「俺ァ、良いよ?ケド、トシ…」
銀時は脱力し、土方に寄り掛かる。
「なぁ銀時、俺ァ、オメーが男だろうが、女だろうが、関係ねぇ。
このまま一緒に居るつもりだ。
嫌じゃねぇだろ?」
土方は銀時の顔を上げて見詰める。
「そりゃ、嬉しいよ?ケド…」
銀時は土方が、女になった自分との間に子を孕んだと思い込み、一大決心で、所帯を持つと真撰組の面々の前で断言した事を考えた。
「ああ、奴らにゃあ色々言われんだろーがなァ、オメーが気にする事ァねぇよ」
「トシ、ホントは、どう思ってんの?」
「ん、少しな、残念な気がするぜ?
俺ァ、男だ女た関係無くオメーに惚れた。
そのオメーが女んなって、孕んだって思った時ゃ、嬉しく思ったぜ。
俺だって子供が欲しく無ぇ訳じゃねぇしな…
惚れたオメーが生んでくれるってんなら、尚更だ。銀時は、どうなんだ?」
「俺は、面白かったな。
女んなったのも、トシの子を孕んでるって、思ってた時も、楽しんだ。
産めるモンなら、産んでみてぇと思ったよ。トシ」
銀時はニッコリと土方を抱き締めた。
「あのまんまだったら、俺の子を産んでも良いって思ってたのか?」
「俺ァ、トシの事ァ、大好きなんだよ?
多分ってか……あ、」
「あ?」
「愛し、」
「てる?」
「かァァァアッ!!
言えねぇ!
恥ずかしいだろーがァァァア!!」
「ヤって時ゃ、始終愛してるって言ってんじゃねぇか」
「え?言ってんの?」
「ああ、俺も愛してるよ、銀時」
土方は銀時を押し倒し、強引な口付けをする。
「ンァッ、ふぅっ、」
「銀時、俺ァなぁ、堪らなくオメーが欲しいんだよ、分かるか?」
「ああ、分かってる…ンァッ、ああッ!」
土方に尻を揉み込まれ、銀時は呻き、勃起させた。
熱く、固く猛る、腰をくねらせ、愛撫に応え、銀時は喘ぎ
「トシぃ、俺も、愛してる、もし、今度、女んなったら…
あぁ、トシの子を、ンッ、産むからッ!はぁうッ」
のけ反り、喘ぎながら言うい切る銀時に土方は笑う。
「オメー、そう言う事言うから、堪らなく欲しくなんだよ、銀時」
「ああ…なんで、んな事、考えるか、んッ…言うか、分からねぇ、ケド、そう、思っちまう…言っちまう…あんっ…」
「もう、黙れ、銀時の気持ち、有り難く受けとくよ、銀時、」
土方は唇の端で笑い、押し広げた銀時の中へ、ゆっくりと挿っていった。

 

 


土方が仕事へ出た後、銀時は風呂場へ行き、鏡に映る自分の姿を見詰めた。

躯は元に戻った。

だが、どこと無く、女っぽい表情。

長い髪だけは、そのままだ。

銀時は鋏片手に長い銀色の髪をザクザクと切り始め、以前より、短く切った。

「まぁ、イケんじゃね?」

呟いて、銀時は髪をワシワシと、乱し、笑った。

 

 

 

 

 

 

 

―真撰組・大広間―

報告、引き継ぎ、会議を終えた隊士達がゾロゾロと引き上げる中、沖田は擦れ違い様、土方に言う。
「万事屋の、旦那ァ見掛けやしたぜぃ」
「そうかよ」
「どうなってんでぃ」
「さぁな」
土方は書類を纏め小脇に挟んで煙草に火を点ける。
「土方さんのガキはどうしたんでぃ」
「一々オメーに言う義理はねぇ。山崎、車回せ」
「はいよ!」
出て行く山崎の後ろから大広間を出る土方に付いて沖田は
「そりゃねぇぜ、土方さん。アンタが所帯持つって屯所を出たなぁ、隊士全員が知ってんですぜ」
と、土方を引き止める。
「ああ、」

[オメーが吹聴して歩いたからなァ、]

土方は思う。

「嫁さんやガキの事も皆知ってんだぜ」
「だから何だ?」
「嫁さんが旦那んなっちまっちゃ、洒落にならねぇって言ってんでぃ」
「話したきゃ、話したら良いだろうが、」
土方は沖田に言い捨て、屯所を後にした。
「なんでぃ、ありゃあ、シレッとした顔して、本当ァえらく傷付いてんじゃねぇかぃ、土方さん」
沖田は呟いて自分の部屋に戻って行った。

 


―万事屋―

「銀さんが元に戻って一安心だね」
新八のセリフに神楽は不満気だった。
「いつもの銀ちゃんも良いケド、マミー銀ちゃんも良かったヨ。
ワタシちょっと寂しいアル」
新八は悲しげな神楽に何を言うか考えた。
「まぁだ、んな話ししてんのかよ。
んな事ァどうだって良いじゃねぇか。
グダグダグダグダうるせぇよ」
「土方さん、真撰組には戻らないんですか?」
「あ~、そのつもりらしいよ」
「なら、良いです」
「良いんだ?」
「ええ。ねぇ神楽ちゃん?」
「良いアル。土方思ったより良いヤツ。
ワタシ銀ちゃん大切にする土方に、ちょっ感動したヨ」
「そりゃオメー、アレだろ?俺が女だったからじゃね?」
「ソレ違うヨ。ヤツは銀ちゃんの事、大好きアル。だから、ソレ関係無いヨ」
神楽は定春をギュッと抱き締めた。
「そうですよ。
土方さん、局中法度なんて厳しい戒律作って、剣の腕も達し、鬼の副長なんて呼ばれてますけど、案外、優しい人ですよね」
しみじみ言う新八に、銀時はちっさい溜め息を吐く。
「土方くんの事ァもう良いって、ああ、暇でやる事ねぇ」
「夕飯の買い出しでも行きますか?」
「あ、新八行って来て、んで、マヨと甘いモン買って来て。俺、横になるわ」
「ぐうたらするアルか?」
「ああ、オメーも一緒に買い出し行け」
銀時は和室に篭り、新八と神楽は定春連れて出て行った。

「銀ちゃん、元戻ってから、様子変アル」
「うん、いつもに増してダルダルだよ」
「アン!!」
「暫くそっとしといてあげよう」

 

 

 

 

ガラリ

「帰ったぞ。
なんだ、誰も居ねぇのか」
奥の和室から呻き声が聞こえ、土方は急ぎ和室へ向かう。
「あ~、お帰り、早かったねぇ」
「どうした…」
土方は胡座かき、寝ている銀時の額に手を当てる。
「何でもねぇ…だりだけだ」
微かに感じる程度の熱だったが、土方は内心心配していた。
「医者行くか?」
「んなの行かねぇよ、だりだけだし、やる気出ねぇだけだ」
「そいつはいつもの事だろーが」
「んだよなぁ、ケドさぁ、トシ…この辺が、虚しいっての?」
胸元を撫でる銀時。
「ああ、そうだな」
土方は銀時を抱き起こし。
「まぁ、こりゃあ、俺達にしか分からねぇ感情だなぁ」
呟いて銀時の髪を撫でた。
「俺ァ、自分が分からねぇ」
「そうか、そうだな。
俺よか、オメーのが、虚しいだろうな」
銀時は強く土方に抱き着き、土方は優しく背中を撫でた。

 

 


ガラリ

「ただいま~。
大江戸マート今日安売りだったんで、奮発してお肉買っちゃいましたよ」
「新八、マヨ帰ってるアル」
「銀さ~ん」
「シッ、放っておくヨロシ」
「あ、そうだね。夕飯の仕度するから、神楽ちゃん手伝って」
「仕方無いアル」
二人は台所に行き、土方は子供達が帰って来たのを知りながら、銀時を抱き締めていた。

 

夕飯の後、土方は気晴らしに銀時を飲みに誘い出した。

 

 


数日経ったある朝

土方は朝食を摂りながら言った。
「銀時だがな、ありゃあ医者に行かねぇと、まずいかもな」
「土方さん」
「銀ちゃん、いつまで経っても、元気無いヨ、いつも以上にボッとしてるアル」
「ああ、鬱っぽい」
土方は真剣に呟いて新八を見る。
「そんな、銀さんに限って、」
「ああ、らしくねぇヤローを見んなぁ、嫌なモンだぜ」
土方のセリフに神楽、新八は共に頷く。
「神楽、二三日、志村ん家に行ってくれるか?」
「分かったアル」
「済まねぇな、」
「良いですよ。ねぇ神楽ちゃん」
「銀ちゃんの為アル」
話しが終わる頃、寝ぼけ顔で現れた銀時は三人が真剣な顔をしている事が気になった。
「おはよ~。ん?何の相談てすか?揃いも揃って?」
「あ?別に何の相談もしてねぇ」
「そ?」
銀時は引っ掛かるものを感じながら土方の顔を見る。
見詰め返され
「なんだよぉ、」
銀時はしかめ面をする。
「最近、オメー、何やってる?
日がな一日ボケッとしてんじゃねぇのか?」
「んだよ、たまたま暇なだけだろ」
銀時はフンと、そっぽ向く。
「そうかよ。なら忙しくしてやるよ」
土方はそう言うと立ち上がり、刀を取って
「じゃあな、夕方にゃあ帰る」
と、出て行った。


「ナニを忙しくしてくれるってんだ」
不機嫌に言う銀時に、新八はご飯をよそる。
ドッカリ座る銀時に、神楽は定春を撫でながら
「銀ちゃん、土方と喧嘩、良くないアル」
と、呟く。
「あ?喧嘩なんざしてねぇって、」
「じゃあ仲良くするアルか?」
「ああ、するよ。で?ナニ?」
「ナニって、ナニ?」
神楽は不思議に聞き返す。
「何の話しか知んないケドぉ、三人でコソコソ話してたろ?ああ?」
「コソコソなんてして無いですよ。
姉上が久しぶりに鍋でもどうかって言ってたので、神楽ちゃんを誘ったんですよ。
姉上、神楽ちゃんが好きだし、泊まりに行く話しを土方さんにしたんですよ」
「そうアル。姐御にハーゲンダッツ買っていくアル」
「ふ~ん」
銀時は納得いかなかったが、新八の用意した朝ご飯を食べ始めた。

 

 

 

 

 

 


午後になり定春と一緒に出て行く神楽を、銀時は二階の手摺りから見送る。
「んじゃ、お妙によろしく~」
「銀ちゃん、イチゴ牛乳は一日一本だけアルよ」
「わぁったよ!心配性のお母さんか、お前は!」

 

銀時は二人を見送った後、居間でTVを見始めた。

 


何とは無しにTVを見ている内に時間は経ち、辺りは暗くなっていた。

 

 

ガラリ

「帰ったぞ」
「ああ、お帰り」
銀時はソファにごろ寝して、土方を出迎える。
「何だ、電気くらい点けろよ」
「ん~」
土方は居間の明かりを点ける。
「オメー、ホント、やる気0だな」
テーブルに買い物袋を置いて言う。
「あ~?そうカモなぁ」
「まぁ良い」
土方は和室に入り着替えた後、居間に戻り、銀時が漁っている買い物袋から、食料品や酒を取り出した。

「メシ作るの手伝え」
「良いケドぉ、ナニ作んの?
つーか、トシ、料理出来んの?」
「ああ、回鍋肉だ。キャベツとコレで出来る」
土方はチルド食品の、混ぜて炒めるだけ的な物を差し出す。
「へ~便利。でも、トシこんなの、どんな顔して買うの?」
「ああ?フツーに決まってんだろーが!
こりゃ山崎のお勧めだ」
「あ、ジミーね。だよねぇ。
アンタがこんなん買う訳無いよねぇ、うんうん」
思わず納得の銀時。
「何だソラ?
俺だってなぁ、買い物くらいするぞ!」
「ハイハイ。んじゃキャベツ切るよ。
んで?他は?ナニ作んの?」
「かた焼きソバ」


野菜を切り終えた銀時の隣で、土方は加熱したフライパンにマヨネーズを山程絞り出した。
「ちょっ!!
ナニやってんのォォォォオ!!
アンタ回鍋肉にマヨネーズってェェェエッ!!!
いぃやあーーー!!
やめて――――ッ!!」
悲鳴を上げる銀時を無視して土方はキャベツを投入した。
「うるっせぇなッ!!
マヨネーズは油だから良いんだよ!!」
「おえぇぇぇぇッ!!」
「汚ねぇ音出してんじゃねぇ!」
「キモい!マジ!キモい!アンタの味覚にゃあ付いてけません!
なんでマヨ?なんでもマヨ?」
「こいつだきゃあ、譲れねぇ!オメーも宇治金時丼なんてモン食うじゃねぇか!
ありゃあ俺も引く!マジ引く!!」
「ッんだとぉ?コルァ!
オメーの土方スペシャルなマヨ丼にゃあうんざりなんだよ!!
毎ん日、毎ん日、朝から晩までマヨ尽くしったぁ、高コレステロールで死にてぇのかテメェ!!」
「高血糖のヤツに言われたかねぇ!!」
「わァァァァァァ!!
焦げる!焦げる!火ィィィイ止めてェェェエ!!」
「テメェがわーわー騒ぐから、んな事になんだろがァァァア!!!」
「テメェ!ナニ人のせーにしてんだ!マヨだろ!
ど見てもマヨのせーだろがァァァア!!」
二人は怒鳴り合いながら、回鍋肉を皿に盛り付け、フライパンを取り上げた銀時がガシガシ洗い、火に架けた。
「俺がっヤルゥゥゥゥウ!!
オメーは見てろッ!
高血糖の上、高コレステロールで死にたかねぇェェェェ!!」
手際良く具材を炒め、あんかけにする銀時を見て土方は感心する。
「なんだ、やりゃあ出来んじゃねぇか」
「当たり前だっての!俺ァ器用なんだよ。やらねぇだけだ」

 


「だから止めろって言ってんだろ?死ぬから!マジ死ぬから!」
マヨネーズテンコ盛りの土方に言う。
「死なねぇよ!!激務だからな。
んなカロリー、あっつう間消費しちまうんだよ!」
「んな回鍋肉見た事ァねぇ!
つーかかた焼きソバもな!
マヨなの?回鍋肉なの?
わかんねぇよ――――!!
既にかた焼きソバでもねぇ!
どっちも黄色いヤツじゃねぇかァァァア!!」
回鍋肉、かた焼きソバのあんの上で、トロトロになったマヨネーズを指して銀時は叫ぶ。
「アズキ掛けんのか?」
「掛けねぇよォォォォォォオ!
何でもかんでもマヨ掛けるオメーと一緒にすんなッ!!」
「そうかよ」
ガツガツと土方スペシャルな、マヨ掛けかた焼きソバと回鍋肉を食べる土方。
ノソノソとかた焼きソバを食べながら
「アズキ、あんの?」
と銀時は聞く。
「ああ、欲しいか?」
「くれよ」
「ああん?コイツにゃあ掛けねぇってなかったか?」
「コレにゃあ掛けねぇよ!!」
「そうかよ、メシ食ったらな」
チラリ横目で銀時を見て土方はニヤリ笑った。

 


夕飯を済ませ、たらふく甘い茹でアズキを食べた銀時は、満足気に腹を摩る。
「あ~~、食ったァ」
「TVでも見るか」
「おう、一休みしたら風呂入る?」
「そうだな、仕度してあんのか」
感心の土方。
「うん。新八が用意した」
「オメー、自分でやれよ、何でも志村任せかよ」
「トシ以外の事ァね」
「当たり前ぇだ!
掃除、洗濯、料理、何から何まで志村任せ。
俺まで任されちまったら、堪んねぇだろうが!」
「任せたって拒否するっての。
アンタの相手なんて俺以外、誰が出来んの?」
ハハッと言う銀時。
「オメーはどうなんだよ。
俺以外に面倒見てくれる相手居んのか?」
「新八だろォ、神楽だろォ」
「テメェ、ガキに面倒押し付けんな!」
「あはは、ま、二人は良く付いて来てくれるよ。こんなヤツにさ」
「何やかや、オメーから得るものがあんだろうよ」
「そうか?ま、何やかや、一番良くしてくれんの、トシだけだから。
色々あったけど、正直、今一番傍にいて欲しい」
「分かりゃあ良い」

 

風呂に入った後、二人は酒を酌み交わし、心行くまで語り合い飲み明かした。

 

 

 

 

 

 


―夜明け前―

 

目覚めた土方は、グッスリ眠る銀時を抱き締め、髪を撫で、頬に口付け呟く。

「済まねぇなぁ、銀時」