かぶき町の外れの小道に車を止め似蔵は言う。
「済まないが、こっから歩いてくれるかい。
あちこち検問が張ってあってね、車変えても、引っ掛かったら意味ないからね」
「ああ、そりゃあウチの旦那だ。
さっきの車手配してんだろ」
「そうなんだよ、
拘引かす所は見られているからね」
似蔵は車のロックを外し、銀時は黙って車を降りて歩き出す。
走り去る車を見もせず銀四郎に話し掛けた。
「お腹すいたねぇ?銀四郎くん」
「ぶぶぅ」
「帰ったらすぐおっぱいあげるねぇ」
「ばぶ」
銀時は銀四郎のおでこに口付ける。
「銀ちゃ~ん!」
走り来る重低音と、神楽の声に銀時は振り返る。
「神楽、定春、探しに来てくれたの?」
「そうアル、銀ちゃん大丈夫アルか?」
「ああ、大丈夫だよ」
「う~む~」
銀時の腕の中で銀四郎が暴れる。
「ハイハイ、触れた?
銀四郎くんは定春が好きだねぇ」
銀時は銀四郎を定春の方に差し出し定春を触らせた。
「どうなってる?」
土方の事が気に係り神楽に聞く。
「わからないアル。
ワタシ携帯忘れたヨ」
「アホですか!アンタ、アホですか!」
「そう言う銀ちゃんはどうアルか」
「アタシ?見りゃわかんじゃん!
銀四郎くんしか持ってません!
荷物は荷物持ち新八が持ってます!」
「オメーもアホね!
ヒトの事言えないアル!
コレ、マジ土方怒るアル!」
「そうねぇ」
銀時と神楽が立ち話していると、四方からパトカーに囲まれた。
「旦那!無事だったかぃ!」
沖田に続き、次々隊士が降りて来て銀時達を取り囲む。
「アレ?沖田くん?寝癖付いてるよ?」
「ああ、気持ちよぉ~く、
惰眠を貪ってたらよぉ、
旦那が拘引されたってぇ
騒ぎで起こされたんでぇ」
沖田は寝癖などさして気にした風も無く言う。
「オメーはいつも寝てるアルな!
サド沖田!」
「おう、チャイナも一緒かぃ」
「何にしても無事で何よりでぇ」
沖田、実は本気で一安心だったが、そんな事、お首にも出さなかった。
「ホントだぜぇ、嫁さんと坊ちゃんまで拘引されたとあっちゃなぁ、
副長も心配でならなかったろうぜ」
「お怪我ありませんか?奥方殿」
斎藤は久しぶりに会う銀時に再びときめいた。
「ああ、何もないよ」
銀時はニッコリ笑い
「それは、何より」
その笑顔に斎藤はクラクラした。
「ホントだよなぁ」
「良かったぜ、無事で何よりだ」
「おう、大事ないか?万事屋の」
「ああ、みんな、ありがとうね」
銀時はニッコリ笑い、銀四郎は黒い隊副を見て、周りをキョロキョロして土方を探す。
「父はいないよ、銀四郎くん」
「そうだ、副長、心配してたぜ、
早く帰ってやんな」
「そうだぜ、万事屋の。アンタが拘引された直後に手配車輌の検問をやったが、なかなか見付からねぇし、心配したぜ」
原田はそう言うと、笑った。
「みんなに迷惑掛けちまったね、
ホント済まないねぇ。ありがとね」
「んな事ァ構いませんぜぃ。
さぁ、旦那ァ送りまさぁ、乗りなせぇ。
チャイナはどうする?」
「ワタシ定春いるからいいアル」
「そうかぃ?」
沖田は銀時を促しパトカーに乗せた。
「後の事ァ土方さんに任せて、みんなァ、近藤さんの指示を受けて下せぇ。 んじゃ俺ァ万事屋に行きまさぁ」
「おう!頼んだぜ!」
沖田は万事屋に向けて車を走らせた。
「大丈夫ですかぃ」
「うん」
「なんだってぇ岡田のヤローは旦那ァ拘引したんでぇ。
やっぱ、高杉ですかぃ?」
「そう。
高杉のヤツ色々文句付けてた。
イヤんなっちゃうよ。
ねぇ、トシ、どうしてる?」
「まぁ、平静を装っちゃいますがねぃ
内心、生きた心地しなかったんじゃねぇんですかぃ。
土方さんホントは指令室当番で、
席外せねぇハズだったんですがねぃ、
近藤さんが変わってくれたんで、
今ァ新八と万事屋で旦那とJr.の帰りを待ってまさぁ」
沖田は相変わらずの口調で、あっさりと告げた。
暫くすると、万事屋の前の道で土方が、銀時と銀四郎の帰りを待っている姿が見えた。
斎藤から銀時と銀四郎の無事は連絡が入ったが、二人の姿を見ない事には安心出来ない土方だった。
「お~や、土方さん、
出張って待ってるじゃねぇですかぃ」
「ホント。銀四郎くん、父がお出迎えしてますよ~」
「ぶぶぅ」
銀四郎を抱え、車を降りた銀時を、土方は抱き締める。
「銀時、大丈夫か」
「大丈夫だよ」
「ぶぶぅ」
「おお、銀四郎、父は心配したぞ」
銀四郎を抱き上げて土方は言う。
「ぶうぅ」
「そうか、そうか」
「アンタ、
ナニ言ってるか、分かってる?」
「分からねぇ」
「こんな所じゃなんだから、中入ろう。沖田くんも」
土方は銀時の肩を抱き寄せ、銀四郎を抱え万事屋に入って行った。
「銀さん!良かったぁ」
新はホッと安心した顔で銀時を見詰め。
「心配掛けたね」
銀時は新八の肩を叩いた。
「何があった?」
そう聞く土方から銀四郎を抱き取り銀時は
「ちょっ、待って。
銀四郎くんのオムツ取り替えておっぱいあげてからで良い?」
と、聞き返す。
「ああ、そうだな」
和室に入って行く銀時、居間には男三人が残った。
「旦那ァ、高杉に何やら文句付けかれたらしいですぜぃ」
「文句?」
「詳しくは聞いてやせんがねぃ」
土方は二人を残し、和室に行く。
「入るぞ」
「ん?」
銀時は銀四郎におっぱいをあげていた。
「大丈夫か」
土方は銀時を抱き口付ける。
「うん。アタシは平気。心配掛けたね」
「ああ、心臓止まりそうだった」
「大丈夫?」
「俺の心配か?」
「そう、気が気じゃあなかった?」
「ああ」
土方は懸命にお乳を吸う銀四郎の頭を口付けそっと撫でる。
「何にも無かったのか?」
「う~ん。
どっちかってぇと、アタシがした?
ヤツに頭突きかましてやった」
「頭突き?」
「そ、だってトシの事、
幕府の狗とか言ってんだもん」
口尖らせる銀時の頬を撫で土方は微笑む。
「そうか」
「他は何にも無かったよ。
誰もアタシや銀四郎くんには触れなかった」
土方は銀時を抱き寄せ
「そうか、何も無くて良かった。
しかし、いったい、何だってぇんだ」
と、呟く。
「さぁ?大した話じゃないけど、
詳しい事は銀四郎くん寝かせてからね」
銀時の腕の中でウトウトしている銀四郎の頭を撫でながら土方はもう一度銀時に口付けた。
「向こうで待ってる」
しばらくして銀時は居間に戻り、土方の隣りに座り、手を握る。
「高杉の用は、アタシが一年前に拘引された時に吐いた嘘の文句付けだったよ」
土方の腕の筋肉がピクリと痙攣し、銀時はその手をキュッと握る。
「どう言う意味だ」
「ん~、一年前に拘引された時、
高杉はね、トシと祝言挙げたのは、
孕んだからかって聞いたの。
そん時にはもう銀四郎くんがいたんだけど、違うって答えたのね。
それが嘘だって、銀四郎くんが産まれたのを知ってバレた訳じゃん?
嘘吐いたのが気に入らねぇって
アンタの子を産んだのが気に入らねぇって言ってた」
「なんだそりゃ、あのヤローにゃ、
関係ねぇだろが」
土方はムッとする。
「そうだろ?
でも、高杉はさぁ、違うんだよねぇ。
コレ言うと、トシ怒ると思うケド、」
「なんだ?」
「天性薬、アレ、辰馬を使って、
高杉が送って寄越したモンだった」
「ぁんのヤローっ!」
土方の額に青筋一本。
「それでヤローはオメーを自分の女にしようって腹だったのかッ!」
「そうのつもりだったらしいよ」
銀時はまた一本増えた青筋を撫でながら答えた。
「らしいじゃねぇっ!
クソッ!ムカつくヤローだぜ!!」
「ハイ、興奮しない!
落ち着いて、ね?」
「落ち着いてられるかッ!クソッ!」
「結果的に何も無いんだから、」
「そう言う話じゃねぇ!今日、拘引されたのだって、あのヤローがオメーの事を犯ろうと思っての事かもしれねぇだろーがッ!」
土方の怒りは最高潮に達しかけていた。
「犯られてねぇ!
第一、高杉はアタシに興味なんざ
ありゃあしねぇ。
アンタと一緒になった、
アンタそっくりの子供を産んだ、
そいつが気に入らねぇって
文句付けただけだ。
アンタの事が気に入らねぇから、
絡んでくんだよ。
ヒトのおもちゃ欲しがる
ガキと一緒なんだよ。ヤツは。
そんなヤツ相手に怒るなってぇの!」
銀時は土方を抱き締める。
「え~、いいですかぃ?お二人さん? 旦那ァ高杉と、親しいんですかぃ」
沖田の問い掛けに土方はキレ気味。
「親しかねぇッ!」
「土方さんにゃ聞いてねぇですぜぃ」
「ああ、アタシ?
う~ん、そっから話すの?
面倒くせぇなぁ。
あ~ナニ?
昔馴染ってヤツ?
仲は悪いけど、まぁ色々?
子供の頃は一緒だった?
空白はあるけど、長い付き合い?
んでも、
今はヤツの攘夷活動は邪魔し捲り?
何てぇの?」
「なる程ねぃ、
やっと合点いきましたぜぃ。
旦那ァ昔ゃあ、
攘夷戦争に参加してたクチかぃ」
「そうだよ。飲み込み早くて助かるよ」
銀時はニッコリした。
「んで、ものっそい強かった。
高杉のヤツぁ、旦那を女にしてでも、 旦那の力が欲しかった、引き込みたかった。そう言う事かぃ」
「当り」
「当りじゃねぇよ!
あのヤロー!マジ!
ブッ殺す!」
「アレ?土方さん?
斬るじゃあ無くて、ブッ殺すですかぃ?
相当キてますねぃ」
瞳孔開き切った土方の目を見て沖田は笑った。
「ああ?テメェ、
余計な事言ってんじゃねぇ、」
今にも沖田に斬り係りそうな土方。
「ちょっ、トシ?
アンタ、キレる相手違うし?
つーか、高杉の事ァ考えんなってぇの。
もうヤツがアタシにちょっかい出して来ない様に手ぇ打ったから。
ホラ、トシ?」
銀時は土方の顔を両手で包むと、強引に自分の方を向かせた。
「いッ!痛てぇ、手ぇ放せ」
土方は銀時の手を叩く。
「もう怒んない?」
「自信はねぇ、ちょっ、オイ、だから、痛てぇよ?マジ、放せって」
銀時は手を放し
「何の手を打ったってんだ?」
と、聞かれ笑う。
「えぇ~ん?そりゃヒミツ~。
高杉にはさぁ、
もう何も出来ないって言った。
子育てしてる、
ただの主婦なんだからさぁ」
「オメーがただの主婦だったとはなぁ、知らなかったぜ?」
土方は銀時をチラ見する。
「アレ?違った?」
「違いやすぜぃ」
「え?そう?新八もそう思う?」
今まで黙っていた新八も頷く。
「全然違います。
フツーじゃありません。
赤ん坊背中に背負って、
腰に洞爺湖差して、
スクーター乗り回すヒトを、
フツーの主婦とは言いません」
新八はジト目で銀時を見る。
「アレ?んじゃまた、嘘吐いた?
アレ?コレ、やばくねぇ?」
四人は互いを見合った後、小さく溜め息吐いた。
「ただいまヨ~」
神楽と定春が帰って来る。
「お帰り~」
「お登勢さんにコレもらったアル」
銀時に大鉢に盛った筑前煮を渡す。
「おお、いいねぇ~。
オカズ一品増えたよ~。
夕飯の仕度しようか」
「そうですね」
同調する新八。
「んじゃ、また後でな」
立ち上がる土方と沖田。
「アレ?戻んの?」
「ああ、コレでもまだ仕事中だからよ」
「そうか」
共に立ち上がる銀時。
「先に夕飯食ってて良いぞ、
帰りの時間分からねぇから、な」
「うん。じゃ銀四郎くんのお風呂も先に入れとくよ」
「ああ」
銀時は土方を抱き寄せ、土方も抱き返して口付ける。
「新八ぃ~、
俺にもあ~ゆ~の、してくれぃ」
「イヤです!」
「アレ?力いっぱい拒否されたよ?」
「倦怠期アルね~。
オメーらもそろそろ終わりネ」
神楽は楽しそうに言う。
「んな事ァねぇや。なぁ?新八?」
言い返す沖田に対し新八はだんまり。
「アレ?新八ぃ~」
「とっとと行けや!
ボケェェェェ!!」
新八は沖田を蹴り出す。
「酷ぇなぁ」
ブツクサ言いながら沖田は土方の後を付いて階段を降りて行った。
深夜になって帰宅した土方を、銀時は居間でTV見ながら待っていた。
「お帰り~」
隣りに座り土方は銀時を抱き締める。
「お疲れ様」
「ああ、マジ疲れた。
平穏な日は、なかなか、ねぇな」
「そうだね」
銀時は土方の上着を脱がしスカーフを外し。
「ご飯は?」
呟く。
「軽く、食った」
「んじゃ、風呂入る?」
「ああ」
銀時は隊服のボタンを外し、ベルトに手を掛ける。
「ここで裸にするつもりか?」
「どこだって一緒」
と、銀時はベルトを外しズボンを脱がせた。
「準備完了」
「何のだ?」
「風呂」
銀時は笑って、寝間着を脱ぎ捨てる。
「一緒に入んのか」
「ダメ?」
「イヤ、銀四ろ、んっ」
銀時に唇を塞がれ土方は柔らかな身体を抱き締めた。
「大丈夫、今日もグッスリです」
笑う銀時に土方も笑い返す。
「久しぶりだな、二人で入るの」
「うぅ・うん・そう・ね…ンッ…」
土方の上になり、ゆっくりと蠢きながら銀時はのけ反る。
「あんま、長湯しねぇよ?
聞いてるか?」
「う・・・ん」
銀時はダルそうに身体を土方に寄せ口付ける。
「そう言やぁ、聞き忘れたんだが、
高杉の隠れ家の場所どこだ?」
「わ、わかんな、い…外、見て…ない」
「チッ」
「か、ァン神楽、は」
「そうだな、明日聞いてみるか」
「ん、ああん」
土方は銀時に口付け、優しく抱き寄せ、強く突き上げを繰り返した。
―翌朝―
土方は銀時が起きる前に身支度整え、皆が起きて来るのを待った。
腕には銀四郎を抱かえ、ミルクを与えていた。
「ん~、おはよう~、早いねぇ」
「ああ、銀四郎起きてたからよ」
銀時は土方の頬にキスし、銀四郎の頭にキスする。
「顔洗って来る」
「おはようヨ~」
神楽は寝ぼけ眼擦り押し入れから出て来る。
「ああ、おはよう。メシ出来てるぞ」
「あ~い」
神楽は顔を洗いに行く。
しばらくして全員揃った食卓で土方は言う。
「今日は昨日の件で調書を作る。
全員、屯所で事情聴取だ」
「ぶぶぅ」
土方の腕の中で銀四郎だけが、気合いの入った返事をした。
「えぇ~ん?かったりぃ~で~す」
のそのそご飯を食べながら銀時は答える。
「ワタシもアルか」
「そうだ。
オメーは定春と、車追ってたろ?」
「あ~、わからないアルよ。
定春に聞くヨロシ」
「テメェら、非協力的だな、ああ?」
「ばぶ・ばぁ」
「銀四郎もそう思うよなぁ?
ちゃちゃっと、
午前中に済ましちまおうぜ。な?」
銀四郎片手にサクサク食事を済ませた土方は携帯取り出し
「車回せ」
の一言で切った。
「ちょっ!早いって!
まだ仕度もしてねぇよ?
つーか、まだメシ食って無いってぇ!」
「そうアル!
レディの仕度時間掛かるアル」
丼メシ掻き込む神楽。
「神ァ~楽ァ~、
レディは朝から5合メシ食わねぇし、 食い散らかしたりよぉ、
顔に弁当付け捲ったりしねぇぞぉ~。 んな、レディ見た事ァねぇ。
なぁ、銀四郎?」
土方と銀四郎はそっくりな顔で神楽を見た。
「イヤある!レディの食事姿見詰めるヨロシくないアル!」
「つーか、いつまで食ってんだよ、早く仕度しろよ」
「ハイハイ、すぐに仕度しますよ」
銀時はご飯に卵を掛けて、一気に掻込み立ち上がる。
「仕方無いアル」
神楽も同様に掻込んで着替えに向かう。
「ばうぅ」
銀四郎はご機嫌に土方を見詰めていた。
―真選組屯所―
「んで、車に乗った後は
外を見ちゃいねぇ、と」
「そうだよ、銀四郎くんだけ見てた」
何となく銀時の心情を理解出来た気がする沖田は頷く。
「で、武家屋敷の様子はどうだ」
近藤の問い掛けに銀時は
「どうって、無人?つーか、廃墟だね。今、多いだろ?
どっかの馬鹿皇子が変なペット飼ったりするくらいに、屋敷は放置されてるだろ?んな感じ?」
と、答える。
近藤と沖田は唸る。
「それじゃ、分かりやせんぜ、どの方面に向かったくれぇ、思い出して下せぇ」
「う~ん。家から四谷方面、だと思うよ?
昨日言ったと思うケド、高杉は船に戻るって言ってたからさ、港のが早ぇえんじゃねぇの?」
「旦那ァ、んな事ァ言いやせんでしたぜぃ?」
「え?言わなかった?アレ?
昨日帰って来てから、ナニ話した?」
「ぶぶぅ」
銀四郎は銀時の髪を引き何か言いたそうに
「ばぶばぁ」
言う。
「銀四郎く~ん、ナニ言ってるかわからないよ?
オジサンは」
近藤のセリフに
「ばぶばッ、ぶぶぅ、ばぶッ、ぶるぅぶッ」
と、返す銀四郎。
「なんでぇJr.
昨日ナニ話したか分からねぇが、高杉と言うヤツは、父を侮辱したので母が怒ったと、んで?」
「ばぶッぶッばっ」
「フンフン、頭突き?
アハハハハ、旦那ァ、高杉に頭突きかますたぁ、やりますねぃ」
大笑いする沖田、満足気な銀四郎、銀時は目が点になっていた。
「もう、ナニ言ってんの?総悟?
銀四郎くんがそんな事言う訳、無いでしょーが」
近藤の意見は最もだったが、沖田は銀四郎と話続け、銀時は驚きを通り越して大笑いしだした。
銀時の大笑いに銀四郎はびっくりし、グズり始め
「ああ、ごめんねぇ、銀四郎くん、びっくりしたねぇ」
銀時は銀四郎を抱き直してあやし、涙を指で拭った。
「ん~、いい子」
銀時は銀四郎の頬にキスし言う。
「母の変わりにお話してくれたの?」
「ふぶぅん、ばぅばぁ」
「そうねぇ、でもね、銀四郎くんは母と父の子ですよ。
どっから見ても、誰が見ても間違い様無いくらい似てますから。ね?」
「そうでぃ、Jr.
オメーさんは土方さんそっくりだし、髪の色は旦那と同じだしねぃ。
江戸広しと言えど、銀髪の女はババァか旦那くれぇしかいねぇよ」
「ふぶぅん」
銀四郎はニッコリ沖田に笑い掛けた。
「なんでぇJr.
母をババァと一緒にすんなって?
ああ、そうだねぃ、一緒にゃしねぇよ」
「ぶん」
沖田は笑い返して銀四郎の頭を撫でた。
「何なの?
なんで銀四郎くんの言葉わかんの?」
近藤は??顔。
「ばぶぅ星人の事ァ、サディスティック星人に任せなせぇ」
「アラ、銀四郎くんばぶぅ星人だって」
笑う銀時。
「ふぶぅ」
銀四郎は抗議する。
「アレ?違うのかぃ」
「ばぶ」
「アハハハハ」
沖田は笑う。
―カラッ―
「楽しそうだな、オイ」
土方が入って来る。
「荒方、場所がわかったぜ」
土方は神楽の聞き取りを行なっていた。
「土方さん、高杉のヤローは、もうそこにゃあ居ないそうですぜ」
「ああ?」
「ごっめ~ん!言い忘れたみたい」
あっけらかんと言う銀時に怒鳴る土方。
「何だとコルァッ!」
「ぴきゃあ」
土方の凄みに銀四郎は泣き出す。
「ぐすん、ぐすん」
「あ~、よしよし、びっくりしたねぇ、大丈夫だよ~ホ~ラ、泣かない、泣かない」
銀時は銀四郎を抱き締め背中を撫でる。
「楽しい気分が台無しだそうですぜぃ」
沖田はニヤリ土方を見る。
「そいつは済まねぇな。
銀四郎も男なら泣くな」
グズる銀四郎の頭を撫でながら言う土方に、銀時は言い返す。
「アンタそりゃ無理だろ。
銀四郎くんは赤ん坊なんだからね。
赤ん坊は泣くのが仕事です!」
「そうかよ。悪かったな、ホラ来い」
土方は銀四郎を抱き上げ涙を指で拭った。
「あぶ」
「ああ、もう怒らねぇよ。
機嫌直せ、な?」
「ぶぶぅ」
「さすが父親ですかぃ」
感心する沖田に銀時は首を傾げる。
「で?いねぇってのは?
どう言う意味だ」
「船に戻るって言ってたの、言い忘れたみたい」
「チッ!」
土方は小さく舌打ちし、銀四郎はそれを見聞き。
「ちゅっ、ちゅっ」
と、唇でマネをし音を立て始める。
「イィヤァ~!!止めてぇ~!
銀四郎くんが舌打ち覚えちゃったよォ!どうしてくれんのォ?」
銀時は抗議し、土方は
「済まねぇ」
と一言。
「済まねぇじゃねぇよ?
何の為にアタシなんっつって、頑張ってると思ってんの?
前みたいにさ、俺ァとか?
テメェッ!とか?男みたいに言ってたらさ、アレ?
おかしくね?おふくろ見た目女なのに、中身男じゃね?
アレ?おやじ二人いんじゃね?
なんて事になんない様にさ、アレ?銀さん、今迄と違うね?
女らしいね?なんて、言われて、頑張ってんのにッ!
銀四郎くんが口悪くならない様にって、気ぃ使ってんじゃん!
なのにさ、アンタさ、」
グダグダ言い出す銀時。
「ああ、分かったよ。頑張ってんな」
土方は銀時の頭をポフポフ撫でる。
「なのに、父、母より先に舌打ち覚えるって、どうなの?」
「覚えちまったモンは仕方無ぇだろ」
「仕方無いってェェェ?
ナニッソレェェェ?
アタシの努力、意味無し?
ええッ?そう言う事?
マジでか!?
すんまっせ~ん!
コイツ、マ~ジ、ムカつくんですケドォォォォ!」
「ばぶぅォォォォォォォォ~」
銀四郎は新しい言葉を覚えた。
「オメーこそ、どうすんだよ?
うォォォ、なんて言ってんぞ」
「ごめんね。エヘッ」
笑顔で誤魔化す銀時の頬を撫で、土方は笑う。
「無理する事ァねぇよ。
フツーで良いだろ。フツーで」
「しっかし、Jr.は言葉覚えんの早ぇえなぁ」
感心する沖田だった。
「ぶぶぅ」
自慢気な銀四郎を見て三人は笑う。
「で~、どうするんだ?トシ?
その屋敷に行くのか?」
近藤の問い掛けに土方は頷く。
「ああ、行くぜ」
「んじゃ、今度はドライブ?」
「ああ、そう言う事った。
銀四郎のオムツ取り替えて、おっぱいやったら、な」
「あぶ」
どうやら銀四郎も賛成した様だった。
銀時が拘引され、連れ込まれた武家屋敷はわかったが、結局、高杉ら攘夷志士達は既に立ち去った後で、廃墟だけがあるだけだった。
「宇宙に出られちまったら、簡単にゃあ探せねぇな…
結局、あのヤローにゃ、逃げられる……
いつか、お縄にしてやるぜ…」
憎々し気に呟いた土方の一言で、高杉の捜索は打ち切りとなった。