銀色の夢【京都篇】 壱

 

 


そろそろ日本列島に桜の便りの聞こえる頃。

北上する桜前線のレポートを、連日TVで放送している。

「来週には関西方面で桜が咲くそうですよ」
TVを見ながら新八は言う。
「もうそんな季節かぁ」
銀時は窓辺から外を眺め呟く。
「今年の花見はやっぱり真撰組と合同ですかね」
「ん~そうだねぇ、今年からはそうなるねぇ。
毎年、場所取りで揉めんのも、楽しかったケドさぁ」
「姉上の料理からは解放されますよ。
真撰組は毎年、伊勢屋で仕出し頼んでますから」
「あそこの玉子焼きは美味いんだよぉ。
ありゃあ素人には出せねぇ味だよぉ」
うっとり語る銀時。
「なんで玉子焼き?
姉上の玉子焼きに対する当て擦り?」
「ナニ言ってんのォ~新八く~ん。
ありゃあ玉子焼きじゃねぇよ?可哀相な玉子だよ?」
「まぁ、そうですケド」
「ねーちゃんがあんなだから、新八は料理上手なんだなぁ」
「死活問題ですから」
銀時と新八は料理談義に花を咲かせた。

 

 

 

 

 

 

 

―真撰組

「来月早々、上様並びに将軍家御一行による、京都奈良への花見が決まった。
今年の同行隊は一番隊、三番隊、六番隊の三隊、俺とトシはいつも通り、とっつぁんの家族、警察庁のお偉方と同行する」
近藤は声高らかに言い
「詳細が決まり次第各隊に通達する。以上だ」
土方は紫煙吐きつつ言う。
「良いなぁ、俺も京都の桜見てぇなぁ」
「暫く行ってねぇしなぁ」
同行隊から洩れた隊士達は口々に愚痴垂れながら、任務に就く為、大広間を出て行った。
「ああ、仕事じゃなきゃ銀時にも、京の美しい桜を見せてやりてぇなぁ」
沖田はニヤニヤしながら土方を見る。
「ナニ言ってやがる?テメェ、頭沸いてんのか?」
土方は沖田に向かいイラッと言う。
「いや、そんな事考えてる顔してたんでねぃ」
「おお、そうか!京の桜は美しいからな!
銀時も連れてってやったらどうだ」
「何言ってんだ?近藤さん。
んな暇ねぇだろーよ。
上様と同行して、戻って来る頃にやぁ、京の桜は終いだぜ。
アイツにゃあいつもの桜で十分だろ」
「一緒に行けば良いじゃないか」
「遊びじゃねぇんだぜ?
俺が物見遊山で、アイツら同行出来るか!」
土方は眉をヒク付かせ怒った様に言う。
「でも、連れてってやりたいだろ。
新婚旅行も未だだしな」
「んなの関係ねぇよ。
さぁ、花見の話しは終いにして、見回り行くぞ」
土方はそう言うと立ち上がり
「行くぞ!総悟!」
と、沖田に声を掛けた。
「はいよ。行くぜぃ野郎ども」
沖田は土方に従い大広間を出て行った。

 

「でも連れてってやりたいだろう?
とっつぁんだって家族連れで行くんだ。
うちの隊士が家族連れだって良いだろ」
近藤は一人大広間で呟く。

 


「ホントのとこ、どうなんでぃ」
沖田はパトカー運転しながら聞く。
「ああ?」
「花見でさぁ」
「テメェが余計な事言いやがるから、
近藤さんがとっつぁんに何か言ったら事だぞ?」
「言うねぇ。近藤さんは馬鹿が付くお人好しだからねぃ」
「分かってて、余計な事吐かしてんじゃねぇ!」
「ああ、俺も新八に京の桜を見せてやりてぇなぁ」
「馬鹿だろ、テメェ」
「俺ァ馬鹿でさぁ。
んな事ァ改めて言われ無くっても十分承知してますぜ。
そいでも、アイツら連れてってやりてぇんでぇ。
喜ぶ顔が見てぇじゃねぇですかぃ」
「チッ!ナニ珍しい事言ってんだ?ああ?サド皇子が!
陽気にヤられて、テメェの頭ん中も、花咲いてんじゃねぇのか?
もう近藤さんに花見の話しはするんじゃねぇぞ!
良いな!?総悟!」
「へいへい、分かりやしたよ」
「俺ァ、アイツら連れてってやるなんざ、一っ言も言ってねぇからな!」
「へいへい、素直じゃねぇお人でぃ」
だんまり、苛々、煙草スパスパの土方を乗せ、沖田は市中を巡視して回った。

 


「とっつぁん!頼むよ!」
「なぁに言ってんだァ~ゴリラ(近藤)!
上様の花見にィ~家族を同行だっとォ~?
寝言は寝てから言えってんだァ~よォ~!
コノヤロー。
遊びに行くんじゃあぁ~無いんだよ?
上様の警護にィ~行くんだよ?
おじさんは~その辺の所ァ~厳しいんだよ?
栗子のヤツァ彼氏連れてく~、一緒にお泊り~、
なんてぇ、吐かしやがってぇ~、おじさんは認め無いよ?」
「とっつぁん、栗子ちゃんの話しじゃねぇって!
トシの話しだ」
「トシ?トシだとォ~?トシが栗子と付き合ってるのかァ?
ああん?聞いて無いよ?おじさんは聞いて無いよ?
殺るよ?おじさんは相手がトシでも殺るよ?」
「違うって、とっつぁん!栗子ちゃんは関係ねぇよ!
トシが嫁さん貰ったって言ってんだよ!
新婚旅行もまだ行ってねぇし、花見に嫁さんを同行させてやってくれよ!!
とっつぁん!頼む!この通りだ!!」
土下座でして頼み込む近藤。
「なにィ~~?
トシが嫁さん貰った、だっとォ~?
祝言挙げたってぇ~話しも、聞いて無いよォ~
おじさんはァ~?ああん?」
「ああ、トシは、とっつぁんも知っての通り忙しいくって、休みもロクに取れねぇ。
そんなモンだから、新婚旅行どころか、祝言も挙げてねぇ。
とっつぁんが知らねぇのも、ムリねぇよ」
「オイオイぃ~~!
真撰組の副長ともあろう者がァ、情けねぇ話しじゃ~ねぇ~のっかァ~あん?
よし!おじさんが許すよ?許しちゃうよ?
なんなら祝言も挙げちゃうよ?
俺が仲人買ってでるよ?ああん?」
「流石とっつぁん!!頼んだぜ!!」
「おじさんにィ~、任せときんさァ~い」

 

ジリリリリ
ジリリリリ
ジリリリリ

ガチャ

「はい、万事屋銀ちゃんで~す」
『おお、銀時。トシ居るか?』
「まだ帰ってねぇケドぉ?」
『そうか、じゃあお前に先に言っておくか』
「あん?ナニ?」
『来月の将軍家御一行様が行く、京都奈良への花見の旅の事なんだがな』
ちょっと勿体振って言う近藤に銀時は
「はぁ?なにソレ?訳分かんないんですケドぉ?
将軍家御一行様の旅なんざ、俺に関係無いんですケドぉ?」
ウゼェなぁと、言い返す。
『俺やトシも同行するんだがな、』
「ああ、んだから?ナニ?」
『お前も行きたいだろ?行きたいよなァ?
一緒に行くか?行くよなァ?』
「ええ?ナニナニ?行っても良いの?
行く行くもう!絶対イクぅ~ん!!」
銀時は色っぽい声を上げ はしゃいでいた。

ガラリ

「帰ったぞ」
「ああん、行く行く!絶対イクぅ~ん!!」
入って来た土方は銀時のエロい”イクイク”声にヒクヒク眉引き攣らせ
「テメェ!誰と喋ってんだァ!!
コルァァァァア!!」
怒鳴り付けて銀時を驚かした。
「っ!びっくりしたよォ!
お帰り。ナニ怒ってんの?」
「テメェ、イクイクったぁ、誰とエロい話ししてんだ!コルァァァァア!!」
『おい!銀時?』
「ちょっ、待って、エロい話し?してねぇよ?コレ、ゴリラ」
「え?近藤さん?」
「うん、将軍家御一行様の旅に俺も連れてってくれるとか、何とか?」
「はぁ?遊びじゃねぇんだよ!」
「俺に怒んなよ、ゴリラが言い出したんだよ?ホラ」
銀時は受話器を土方に差し出す。
『ちょっ!誰か聞いてるぅ?』
「ああ、聞いてる。何だ、近藤さん。
銀時に何言ってんだよ。
俺達ァ、遊びで京に行く訳じゃねぇんだぜ?
上様の警護に行くんだ。あんま、唆さないでくれよ」
『大丈夫だ!
とっつぁんが良いと言ってくれた。
お前達が新婚旅行も祝言も、まだ挙げて無い話しをしたらな、』
「ちょっ、ちょっと待ってくれよ近藤さん、アンタとっつぁんにそんな事言ったのか?」
『ああ!とっつぁんが仲人買って出てくれたぞ!
上様も、鬼の副長を射止めた嫁さんが見たいって、そりゃあノリ気で』
「待てェェェェェエッ!!
アンタ!上様にまで話す事かァ!?」
『ちょっ、トシ、ナニ怒ってんの?
平安神宮で祝言だよ?とっつぁんが仲人だよ?
上様もお揃いで立ち合い下さるんだ。良い話しだろ?』
「あ…」
土方は口をパクパクさせて何を言い返すべきか、考えた。
『トシ、とっつぁんも上様もその気だからな?』
「……」
もう、絶句するしかない土方だった。
『トシ?聞いてる?』
「ああ、聞いてるよ。分かったよ。
じゃあな、近藤さん」
土方は"ガシャリ"音を発て受話器を置き、あらぬ方を睨んだ。
「んな怒んなよ。
京都付いてくなんて言わねぇよぉ」
「怒ってねぇ…」
土方は深々溜め息吐くと、銀時をギュッと抱き締めた。

 

 

 


「ちょっ、どしたの?」
「もう、何て言やあ良いのか、分からねぇ」
「トシ?」
「近藤さんが、とっつぁんに、俺が嫁さん貰った話しして、新婚旅行も祝言も、挙げてって話しをした」
「ああ、うん。そりゃあねぇ?
フツーの関係じゃあねぇし?
祝言なんざ、挙げねぇよ?
新婚旅行は、ちょっ、行ってみたいケドぉ」
銀時は土方の背中を撫でながら笑う。
「ああ、連れてってやるよ。
将軍家御一行様と行く京都奈良への花見の旅ってのにな」
「イヤイヤ、んな大層なモンじゃあなくても良いんだけど?つーか、その辺で」
土方は顔を上げて
「いや、ソレに決まった。
ついで、平安神宮で祝言を挙げる。とっつぁんが仲人で、将軍家が立会人だ」
と言い切る。
「ちょっ!何ソレ?なんで将軍家?なんでンな大事になってんの?」
「近藤さんは良かれと思って、上様に掛け合ってくれたんだ。断れねぇ」
「はぁ?なんだよ、んなの聞いてねぇし、だいたい、なんだよ?
祝言って?え?ナニナニ?白無垢着んの?
アレか?白い綿帽子被って?
俺が?んなの、ナイナイナイナイ」
「いっつも綿帽子被ってる様な頭してっからな。
んなのする必要もねぇケドなぁ」
土方は銀時の銀髪をポフポフ撫でて笑う。
「ちょっ!アンタ!
俺の頭が白いからって失礼だろ?俺ァ銀色なの!
いっつも綿帽子被ってる訳じゃねぇ!」
「俺って言うな」
「あ?なんでだよ」
「オメー、上様の前で俺なんて、言うなよ?
頼むから」
「あ?ああ、そうね」
納得の銀時。
「チッ!」
「なんで舌打ち?」
「オメーじゃねぇ。
総悟の思惑通りになって来たと思ったら腹立ってきた。クソッ!」
「沖田くんが火種?」
「ああ、会議終わったらアホな事、言い出しやがって、」
「んで、紆余曲折あって、こうなった?」
「ああ、クソッ!総悟のヤロー!!」
「トシぃ?」
「あ?」
「ウチの子達も連れてってくれんの?」
「ああ、当然だ」
「定春も?」
「ああ、他は?
この際だ、好きなだけ連れてってやるよ」
「んじゃ、お登勢のバァさんだろ?キャサリンに…
ん、お妙はどだろ?来るかな?」
「祝言って言やあ、来るだろ」
「ああ、でもどうすっかなァ、ゴリラと間違いでもあったら事だからさぁ」
「ああ、そうだな。
ゴリラじゃあねぇ近藤さんだ。ったく、総悟のヤローに志村の事ァ近付けんなよ」
土方は舒に煙草を取り出し吸い付ける。
「なんで?」
「志村に京の桜を見せてやりてぇ、なんて思いで俺達をダシにしやがったからよ
桜だけ一緒に見せてやりゃあ良い。
総悟に良い思いなんざさせねぇ。
あのヤローの事った、志村に悪さするに決まってる」
「わぁぁ、意地悪だなぁ、悪さってかイイ事なんじゃねぇの?
俺達ァ祝言すんのに?新婚旅行も付いてんだぜぇ?
なのに?うふふ。良いねぇ、沖田くんに意地悪」
「おう、俺って言うな」
「あ、アタシぃ」
「カマ言葉も止せ」
「チッ、面倒くせぇ」
「銀時…」
土方は銀時を軽く睨んで 煙草を消す。
「はーい、んね?」
銀時は仕方無しと頷き ここぞとばかりに言う。
「ん?」
「服新調して良い?」
「ああ、好きな様にしろ。近藤さんで領収書切っとけ」
「アハハ、了解!ナニ買うかなぁ」
「かなりの量、必要だぞ」
「なんで?」
「朝昼晩って着替えっからな」
「はぁ?やだよ、面倒くせぇ」
「銀時…
オメー少し言葉の練習しとけ、な?」
土方の言葉に銀時はニッコリ頷いた。

[マジ面倒くせぇな]

心の中で呟いて 銀時は土方の膝に乗る。
「どうした」
「晩御飯作ってない」
「あ?別に良いぜ?下で喰やぁ良いだろ?ついで祝言の話しもすりゃあ良い」
「そうだね」
「神楽どうした?」
「お妙に呼ばれて新八ん家」
「そうか」
土方は呟き 器用に懐から煙草を取り出す。
銀時はチラリ横目で見た後 スクリ立ち上がり 土方の着物を取りに行く。
「ソレ吸ったら下、行こう。腹減りました」
「ああ、」
土方は頷きながら隊服を脱ぎ 銀時はハンガーに掛けていく。

 


「祝言はめでたい話しだけどねぇ、将軍様と旅行なんざ、御免だよ。あんたらだけで行っとくれよ」
お登勢は煙草をスパーッと吸い付け言う。
「そうか?残念だな。
アンタ銀時の親みてぇモンだしよ、」
「まぁ、良いじゃん。無理強いする事っちゃないし、バァさんにゃあバァさんの都合ってモンがあるしよ」
「そうだよ。
折角誘って貰って悪いケドさ、ウチも商売やってからねぇ」
「ああ、こんなシケタ店でも閉まってちゃ困るオっさん共がいんだよ。なぁ?」
「なんだとコルァ!!
シケタ店ったぁなんて言い草だい!銀時!!」
お登勢の怒鳴り声が響く。
「ったくテメェは口の悪い…
まちっと女らしくしろってんだろーが!」
「ああ?面倒くせぇんだよ!
大丈夫だってぇ~、いざってぇ時は煌めくから」
「何だテメェ…
随分と、懐かしい台詞じゃあねぇか」
「ああん?そ?」
「ああ、テメェが煌めくのなんざ、とんと、お見限りだがなァ、
テメェが煌めくなぁ、刀ブン回してっ時位か?」
「良いじゃあねぇか、いざって時だろ…
つーか、飯」
銀時は不満気に横を向いた。

 

 

「何、むくれてんだ?」
「別に…」
「オメー、別にって顔じゃあねぇぞ」
「イイだろ?もう…寝かせてくれよ」
「あ?眠いのかよ?
まぁ、良いや、寝たきゃ寝ろよ勝手にやってっから」
土方は手酌で酒を注ぐ。
「ふ…あぅん」
銀時は土方の肩に寄り掛かり欠伸。
「ここで寝んな…オイ、銀時?」
銀時はあっという間に眠りに就いてしまった。
「ったく、」
土方は銀時を抱き上げ和室に寝かせに行った。

 

 


一面に広げられた色とりどりの衣服を眺め 土方は溜め息吐く。
「で?こりゃ何だ?」
「アオザイ。ベトナムの民族衣装です」
「そりゃあ分かる。
なんで、あのヘンテコ着物と同じ柄なんだ?」
「そりゃ、トレードマーク?
わざわざ仕立てて貰ったんだよ」
「分かった」
土方はジッと真っ赤なチャイナドレスを見詰める。
「ああ、コレ?大丈夫、パンツ作りました。
ホレ見ろ」
銀時は揃いの布で作ったパンツを広げて見せた。
「なんだってオメーはピッタリした服ばっか、作んだ?」
「うん?セックスアピール?折角のボンキュッボン!
見せ付けないと、ね?」
「何だとッ!?誰にすんだ!」
「あん、やっぱ、男共?つーか、トシ?」
「んな事ァしなくて良い!
俺ァオメーがナニ着て様が関係無く欲情する!
それよか、なんでオメーは女性用下着を着用しやがらねぇ」
「だからさぁ、言ってんだろ?
昔の人はみんなノーパンだったってぇ」
「オメーのノーパン談義は聞いてねぇ」
「んもう!アレだよ?
あんな可愛らしいモン身に着けてみ?
真っ裸よかエロいよ?もう、アレ、ナニ?
峰不二子所じゃあねぇよ?」
「知ってる!
良いから、せめて下履きくらい買え!」
「イヤン!
今時下履きなんて言わないぞ!ショーツって言うんだぞ!」
「テメェ来い!
そのショーツとやら、履いて貰おうじゃあねぇか!」
「マジでか!?」
「ああ、マジだ」

 

 

―四越デパート―

女性用下着売り場

「苦っしい!死ぬ!死ぬって!やめてぇ!!」
「お客様、お静かに。
まるで私が絞め殺してるみたいじゃありませんか」
「うるせぇぞ!銀時!済まねぇ、良いから着せてやってくれ」
土方は更衣室で 悲鳴あげ ブラジャーを着けて貰っている銀時に言う。
「アンタねぇ!自分でコレ着けてみろって!
コレ、アレだろ?拷問だろ?マジ苦しいから!死ぬよ?マジ死んじゃうよ?」
「んなモンで死ぬヤツぁいねぇ!」
「ああ、もう!」
銀時は更衣室の扉を勢い良く開け
「コレで良いのか!」
と出て来る。
「テメェ、服着ろ!」
「うるせぇ!コレで良いかって聞いてんだよ!」
銀時は真っ白なセクシーなレースの下着を見せて言った。
「やっぱ、エロいな…」
土方は真剣に一言呟いた。
「んじゃ、コレ下さい」
銀時はニッコリして更衣室に入り 手早く着替えた。

「今のと同じサイズで、後三組見繕ってくれ」
「はい。お色は?」
「黒」
「三組共でございますか?」
「ちょっ、アンタねぇ、黒いの三枚もいらないから、ソレ、アンタのイメージカラーだから」
慌てて出て来た銀時が口を挟む。
「んじゃ、何が良いんだよ」
「黒2、後は白2組あれば良いでしょ」
「んじゃソレで」
「畏まりました」
店員が品物を探しに行く間。
「だいたいさぁ、んなモンいらないんだよねぇ~
苦しいし、なんか股んトコがピッタリするし?
こんなセクシーな下着、新八洗ってくれないじゃん!」
「何?テメェ、下着まで志村に洗わせてんのか?
ハッ!俺のもか!?」
慌てる土方。
「うん。たまに洗って貰います」
「テメェ、巫山戯んな!
今度からテメェのモンはテメェで洗え!」
「ええ?たまにだよ?」
「銀時!志村は助手であって小間使いじゃあねぇだろーが!」
「新八助手じゃん?
助ける人じゃん?新八はいっつも助けてくれます!」
「銀時!テメェ、」
「つかテメェだって当たり前の様に俺に洗濯させてんじゃん!狡くね?
俺には自分のパンツまで洗わせといて、狡くね?
たまにゃ、俺のパンツ洗えってんだよ!」
「誰がテメェのパンツ洗うんだよ!
男がんな恥ずかしいマネ出来っか!」
「何だと!?コルァ!
俺はテメェよか長く男やってんだよ?
なのに俺ァ、テメェの洗濯全部やってんじゃん?
たまに新八が手伝ってくれる位良いじゃあねぇか!
嫌ならテメェが手伝え!」
矢継ぎ早に繰り出される銀時の言葉に 土方はこれ以上店先で口喧嘩するのも と考え口篭る。
「はぁ…」
土方が深々溜め息吐くと 店員が商品を手に現れた。
「お待たせいたしました」

 

 

フルーツパーラー

江戸主水

土方は煙草吹かしてコーヒーを飲み 銀時はフルーツたっぷりのパフェを食べていた。
「んね」
「なんだ」
「トシは買い物無いの?」
「ああ、どうせ俺ァ隊服だしな」
「そうなの?洋装すりゃあ良いのに、似合うよ」
「着物で良い、オメーは?他に欲しいモンねぇのか?」
「いらねぇモン買って貰ったしぃ?
着物もあるの持ってくし、もう十分だよ」
「そうか。じゃ喰終わったら帰ぇるか」
「うん」
銀時はニッコリして最後の一口を平らげた。

 


「京都かぁ」
「行った事、あんのか?」
「ああ、若い頃、まぁ、通り過ぎたっての?」
銀時は土方の指に指を絡めて 少し力を込めた。
「真っ直ぐ帰る?」
「どっか、行きてぇのか?」
「ううん、ぶらぶら」
「ああ、今日くれぇしかのんびり出来ねぇからな、散歩も良いな」
「そう、良いでしょ?」
行き交う人々が 仲睦まじく寄り添い手を繋ぐ二人を見ていく。
一見 美男美女のカップルに見えるからだ。


「みんな、アンタの事、見てる」
銀時はクスッと笑う。
「んな事ァねぇだろ」
「見てるよ。
ムカつくケド、男前だからさぁ」
「ムカつくのか?」
「あ、男前は否定しないんだ?」
「ああ、」
「だよねぇ。
女にゃ不自由した事無いモンねぇ?」
「ねぇな。何絡んでんだ?
女にゃ不自由しねぇ、男前が気に入らねぇのか?ムカつくのか?」
「うん」
「一生ムカついてろ。
女にゃ不自由しねぇ男前がオメーの旦那なんだ」
土方は笑って銀時を抱き寄せた。
「そっか、そうだね」
銀時は笑い返し
「ホント、」
と 呟き
「ホント、何だ?」
「ムカつく位、男前」
腕に抱き着いて言う銀時に土方も笑う。

 

「今夜はさぁ、みんな家にいるよ?」
「ああ、お妙も来るって言ってたな」
「うん。今夜はスキヤキだから。
ねぇ、お妙も一緒に行くって、ゴリさんに言ったの?」
「ああ、すげぇ張り切り様だ」
「ありゃあ、ちょっ引く事覚えないとダメだよ?
あんま、しつけぇと、女は引くつーの」
「そうだな。でもまぁ、俺達みてぇな関係ってのもあんだろ」
「ナニナニ?アレか?ホラ、アレ?
喧嘩ばっかしてたのにィ、実はLOVE×2ヤり捲り~!
みたいな?ヤってみたら相性最っ高~!
みたいな?そんな事?」
「まぁ、そうか?」
「なんで?マーク?」
「いや、H的な事だけなのか?」
「まぁ、ソレだけ?」
「なにっ?」
「んな訳無いじゃん。
色々、支えになってくれてる。
正直、今まで精神的に人に頼った事なんざ、一度としてねぇよ?
なのにトシには頼りっぱなしだよ。
いないと、困る。
俺が、からっぽになっちまう」
「銀時」
「前に、トシが言った様に、何かが消える」
そっと寄り添う銀時を抱き土方は頬を寄せた。
「同じ気持ちって事か…」
頷く銀時。
土方は銀時の頬に口付けて呟く。
「寄ってくか?」
「ナニ?」
銀時は土方の指す、通り奥のラブホを見上げる。
「今朝方ヤったじゃん
つーか、昨晩からヤりっぱなし?」
「今ヤりてぇ」
「何かさぁ、今、良い話ししてたよね?」
「だからだろ?」
「アンタの性欲、どこで火が点くのかわかりません」
「良いだろ?」
「イイよ」
銀時は笑い土方の腕を引いてラブホに向かい歩き出した。


部屋に入るなり
「なぁ、さっき買ったアレ、着て見せてくれよ」
土方はべッドに腰掛け コートを脱ぐ 銀時に言う。
「あ?見たじゃん」
銀時は手を止め土方を見る。
「黒いの、」
放って寄越す紙袋を受け取り
「白の比じゃあねぇ位、エロいよ?多分」
銀時は呟く。
「いいから、見せろよ」
銀時は受け取った紙袋を漁り 薄紙に包まれた黒い総レースの下着を取り出した。
「生着替え見んの?」
「ああ、」
土方は笑い煙草に火を点ける。
帯留め 帯上げと次いで 帯を解き 腰紐を緩め ゆっくりと脱いで行く銀時。
銀時の足元に順に脱がれた着物が溜まる。
気が付くと土方はストリップを見ている気分になっていた。
ニヤニヤしながら土方は
「案外、色っぽい脱ぎ方じゃあねぇか」
と、からかい
「ああん?ストリップ見てるつもりィ?」
銀時はクスッと笑って 長襦袢姿になると 背を向け腰を振りながら 黒い総レースの下着を身に着けた。
「なんだ、ソコは見せねぇのか」
土方は煙草を揉み消し笑う。
「ふふん…」
本当は ”面倒くせぇ”なんて思いながらも 銀時は土方の求めに応じていた。
振り返る銀時は妖艶に微笑み 土方の前に立つ。
「どう?」
長襦袢を肩から脱ぎ落とし 下着姿を土方に曝し 躯をくねらせ 軽く脚を開いて 腰を振った。
「いいな、黒はオメーの白い肌を浮き立たせて、赤も良いかなぁ」
「ナニ、じっくり見てんですか?こんなの見慣れてるだろ?」
「ああ、ケド、オメーのは、見た事ァねぇからよ。
いやァ、なかなか、俺の嫁さんもエロいなァ」
土方は銀時の腹に顔を寄せ 背中と腹を撫でながら乳房を頭で押し上げた。
「んッ、キンタマ固くしてんじゃないよォ、もぉ」
「ああ?その為に来たんだろーが」
「そうね」
「なかなか良いぜ」
土方は乳房に顔を埋め 柔らかな肉を囓む。
「んッ、や、脱ぐから…ん、汚すと、アレだから…」
「んじゃ、脱がせてやるよ」
「う、うん」
口付けられて銀時は土方を抱き寄せた。
「まだ、仕度、終らないんだけど…
明後日、ん、出掛けんのに…」
「夜、手伝ってやるよ。
だから今はコッチに集中しろ」
土方はじっくり銀時を撫で回し 愛撫を繰り返す。

 

 

「ん、ん、早く、脱がないと…汚すから、んぁ」
「ふん、そんくれぇ濡れるってぇ事か?」
「うぅんッ、知ってるくせ、にッ、あん…
だから、下着なんて…ん、いらない…って、」
「ああ、なる…」
ブラのストラップをずらし 乳房を揉み出し ブラを外しながら土方は固く尖った乳首を囓じった。
「ひんッ!は、早くぅ…脱がせて、上よか、下が先」
銀時は躯を震わす。
「分かったよすげぇな、もう染みてるぜ?」
土方は大きく開かせた脚の間を見て笑う。
「ああんッ、もう、どうでもいいからッ!」
銀時は土方を押し退けて起き上がり ショーツを毟り取るかの様に脱ぎ捨てた。
「ダイナミックだな」
「ああ!うっぜぇんだよッ!
ピチピチだから脱ぎ辛いんだよッ!キィーッ!
マジムカつくんですケドっ!」
「怖ぇえな、ムキになって怒る所か?」
「何ならテメェが履いてみやがれ!」
「俺が履いたら変態だろーが」
「俺に女性用下着着せる辺りからして、変態なんじゃねぇの?」
「銀時?
オメーの胸元でユサユサ揺れてる乳は女のモンじゃあねぇのか?
そのフカフカの銀色の毛の下に透けて見えるワレメもなぁ?
俺よかオメーのが似合う体型だろーが」
「テメッ!オっさんだから!
その言い方、オっさんだから!
そう言う言い方やめてくんない!?」
「オっさんオっさん言ってんじゃねぇ
事実だろーが。ま、落ち着けよ。な?」
土方は銀時を抱き寄せ 膝上に乗せた。
「俺ァ、他の奴らにオメーの躯、見せたかねぇだけだ。
さっきオメーが俺に言ったセリフ、そっくり返してぇよ。
行き交う男共はみんなオメーを見てた。
舐め回す様にな…
女んなってからコッチ、オメーは男共を悩殺しそうにエロいモン出して歩ってる」
「薬のせーだろ?」
「ああ、多分な。
だがな、オメーは俺がムカつくっ、つったがな、俺はオメーを見る男共がムカつく。
考えるだけでムカつく…
オメー、奴等の頭ん中で犯されてんだぞ?
ああ?分かっか?正直、叩っ斬りてぇ…」
「アンタ、過激派?」
「ああ?俺ァ、警官だぜ?
悋気起こして、テメェに欲情する男共を片端から斬って歩く訳にゃあ行かねぇ。
だからテメェは俺に気ぃ使え!
他の男にエロい目で見られるんじゃねぇ!」
「なんだソラ?んなの知るかってぇの。
俺に気ぃ使えだと?イヤです!
俺ァ、十分に気ぃ使ってます!
朝から晩まで、ずぅっと!
朝飯作りだろ?(たまに新八が)
晩飯作りだろ?(ほとんど新八が)
掃除、洗濯、テメェの隊服のシャツのアイロン掛けに、朝から晩まで、暇さえあればヤり捲くりのセックス!
アレは着るんじゃねぇの!
ソレやるんじゃねぇの!
ナニからナニまでテメェに合わせてやってんじゃねぇか!!
パンティだってブラだって着けてやってんだろ?
ああ?ピッチピチで苦っし~~~いッ!
思いしてまで!
テメェこれ以上ナニ気ぃ使えってんだ!?ああっ!?」
銀時は長々苛々と言い返す。
「分かった、分かったよ。イヤなら着なくて良いぜ。
んな気短になんじゃあなァ。無理に押し付けてんだし…
脱ぐ度にキレられてもなァ…
しかし、前々からよく喋るヤツだったが、オメー女んなってから、更に口が達な……
立て板に水かよ、怖ぇえぞ…」
そう言って説く土方の耳を銀時は囓った。
「いっ!」
「アンタさぁ、俺がエロいモン出して歩ってるって言うケドさぁ、また、ねぇ?
薮ん中とかにぃ引き擦り込まれたりしたら?
もっと煽りそうな姿になんじゃないのォ?」
銀時はニヤニヤする。
「テメェが簡単に薮ん中なんぞに引き擦り込まれるタマかよ。
そりゃな、もう着ても着なくても良いぜ。
確かに欲情掻き立てる様相だからよ」
「まぁね、んな痴漢野郎に犯られるなんてぇ事ぁ無いケドね?
万が一って事もあんじゃね?
んで、ね?後で一つ、試合ってくんない?」
「はぁ?試合?何でだ」
「運動不足?Hばっかじゃあねぇ?
運動にゃ、なんないし?」
銀時は土方の胸元を撫で回し さっき囓った耳を舐める。
「万が一の痴漢撃退の為にも、ね?
鈍んない様に、ねぇ?」
銀時はクスッと笑うと 土方の膝から降りて膝の間にしゃがみ込んだ。
土方の帯を解いて 着物の前を開け 固く張り詰めた男根を指先でなぞり チュッと 口付けた。
「今して欲しいのは、コレ…
くれんの?くんないの?」
玉の方からカリへゆっくりと舐め上げ 銜え込む銀時の唇を見詰め土方は笑う。
亀頭を軽く吸い 鈴口を弄いながら 舌を絡ませる様にカリ首に這わせ ゆっくりと 舌を使いながら飲み込んで行くかの様にしゃぶり続けた。
銀時の口の中で 固さと 張りが増し 玉が引き上げられて来るのを 銀時は感じ 上目使いに土方を見る。
「オメーん中でイカせろよ…銀時」
土方は妖笑を浮かべ 銀時は 惜しそうに唇を離した。
立ち上がり 土方を押し倒して跨ぐと 銀時は土方の支え持つ男根に腰を落とし ゆっくりと女陰の中へ収めていった。
「ふッ…ぅうん…」
「熱いな…蕩けそうだぜ、銀時」
「あんッ…ゆっくり…して…」
銀時は腰をゆるゆると蠢かしながら 土方の胸に両手を付く。
「あんッあッ…ンンッ」
徐々に速まる腰の動きに合わせ 土方は強く突き上げた。
「あぁあ!…イイっ!トシ…ンッンッ…アン!」
「堪らねぇな…キューキュー締め付けてよ…
ああ…気持ち悦いぜ、銀時」
「はぅんッ!アン!あんッ!」
「腰、止まらねぇじゃねぇか…そんな、悦いか?」
「うん…イイ、悦い、ああん…気持ち悦いよぉ、トシぃ…」
「オメーん中は、いつも蕩けそうに熱い
俺ァ思うよ、お互い、こんな好きものだったか?」
「うぅん、ど…だろ、実は、本性…なんじゃ、ないの…」
「そうか?」
「んッ、トシと、抱き合うまで…こんな…
知らなかった、自分が好きもの、なんて、」
「ああ、そうなんだよな…」
「気持ちいいの、今までと、違うんだよね…」
「ああ、俺ァ、もうイキそうだよ」
「うん、イイ、よ」
銀時は微笑み 膣を引き締め 激しく動き 土方の呻きを聞く。
「ああ、銀時、」

 

 

 

 

「悦かった?」
土方が放った後 銀時は妖艶な笑みを浮かべ問う。
「なんだ、もう終いか?」
「クスッ、だってさぁ」
銀時は柔らかくなった男根を収めたまま 土方の上でジッとしていた。
「もう、無理でしょ?ヤり過ぎだっての」
「動けよ」
「ヤダよ。動いたら抜けちゃうモン」
「そうしてたって、固くならねぇぞ」
「んなの、知ってるって。
まぁ、ちょっ、付き合いなさいよ、ね?」
銀時は笑って土方の上に肌を重ね 唇を重ねる。
ゆっくりと舌を絡め吸う土方は 銀時の背中を撫で尻を撫でる。
「ふンッ」
撫で回していた指が尻の穴に差し入れられ 銀時の躯は 反射的に尻も女陰も引き締まり 土方の男根を締め付けた。
「やだよ、そこは、」
「男ん時ゃここばっか使ってたってのによ」
「女んなったんだから、ソコは良いでしょ?使わなくても」
「そうか?」
「あんッ、そ、だよ…ちょっ」
銀時は土方の上で震える。
「おぉ、なんだ?グニグニ蠢き始めたぜ?」
「ンッンッ、あ…おっきくしない、でよ…
まだヤる気?」
「ああ、ヤるぜ」
「ちょっ、尻の指、抜きなさいよ、ンッやっ…ああん」
「感じてんなぁ、どっちもヒク付かせてよォ」
土方はニヤリ銀時を見る。
「ばッ、アンタがイきゃ、済む話しだろ…」
「ああ?んな訳ねぇだろ。オメーがイってねぇのによ」
「んな、気ぃ使うなっての、こちとら、十分愛して貰ってんだから」
「こんな中途半端で十分ったぁ、言わねぇだろ、オメーがイくまで、終わらねぇぞ」
「ば、イくよ、もう。簡単にイっちゃうよ」
「アハハハハハ、何度でもイけよ、な?」
「もう、アンタと違って若かねぇんだからさ、労ってよね?」
「ああ、労ってやるよ。
でもよ、言ってっ事と、ヤってっ事、違くねぇか?
ヒク付かせて、腰振ってんなぁ、銀時だぜ?」
「んッ、もう、黙れって、」
土方は笑って 銀時を下に組み敷き 両足を担ぎ上げて 激しく突き立てた。
そうして 固く尖った肉芽を摘み 指の腹で擦り付け 時に爪先で掻いた。
銀時は躯を震わせ のけ反り 土方の肩を掴む。
「あんッ、あん、ンッンッ」
土方の動きに合わせ腰を蠢めかし 更に快感を得ようと女陰をキュッキュッ引き締める。
「オイオイ、んな締め付けんな、俺がイっちまうだろーが」
「イヤ、ダメ…アァンッ、もっと、もっと奥まで…あんッ」
「こうか?」
「うぅん、悦いッ!
アンッアンッ!イ、いっちゃう!」
「ああ、イけよ」
蕩ける視線を泳がす銀時に 土方は満足気な笑みを浮かべ 銀時はギュッと土方を抱き締めた。