銀色の夢【かぶき町子育て日記 銀時四郎くんと一緒】 参

―ある晴れた日―

 

―万事屋―

ピンポーン

ピンポーン

ピンポーンッ!
ピンポーンッ!
ピンポーンッ!

「うるっせぇーーッ!!
子供が起きるでしょーがッ!!」

―ガラリ―

「貴様の子はあの巨大犬の側に居れば起きぬのを俺が知らぬとでも思っているのか!銀時!」

「なんだ、ヅラか」

銀時はシカメ面で目の前に立つ桂を見る。

「ヅラじゃない、桂だ!
それに、なんだ、とはなんだッ!貴様!
それが客に対する態度か!銀時!」

桂は怒り顔で返す。

「客?間に合ってますッ!」

―ピシャリ!!―

銀時は扉を閉める。

「貴様!話を聞け!」

―ガラリ―

桂は扉を開ける。

「ナニ?
つーか、なんで昼間っから、ヅラ子?」

「貴様の家に来るには、こうするより仕方あるまい!
ヤツが何時居るのか分からんのではなッ!!」

桂は銀時の後を付いて上がり込む。

「誰が上がって良いと言いましたか!」

銀時は振り返って文句を付ける。

「ホレ!茶菓子だ!」

差し出す菓子折りを受け取り、仕方無く銀時は

「ど~ぞ~」

と、ソファを勧める。

「いらっしゃい、桂さん。
今、お茶淹れますね」

新八は笑顔で台所へ行き、桂は丸まって眠る定春を見付け、その懐に眠る銀四郎を見詰める。

「やはりな、童は起きぬでは無いか」

「あ~、んで?なんですか?
ウチのラブ銀四郎くんでも、見に来たんですか?」

「ああ、それもある。
久しく見ていないからな。
随分と、大きくなったものだ。
が、話は違うぞ。
貴様、高杉に何を言った!」

桂は銀四郎から目を離し、銀時と向かい合う。

「ナニってナニよ?」

銀時は茶菓子の包みを開けながら聞き返す。

「高杉に俺の職場を教えたろう」

「あ?職場なんだ?就職おめでとう」

銀時はニヤリして桂を見る。

「就職などして居らん!
攘夷活動には情報収集が不可欠!」

「イヤ、かまっ娘倶楽部で、攘夷活動に役立つ情報なんざ、ありゃあしないっての。
いい加減気付けバカ」

銀時は笑いながら菓子を取り出す。

「お待たせしました」

新八は笑顔でお茶を出し、桂は

「すまぬな」

と、お茶を口にした。

銀時は菓子を食べ始め、箱を新八に取り上げられる。

「ちょっ!ナニすんのォ!」

「甘いもの摂り過ぎです。
さっきもお饅頭食べたじゃないですか」

新八は冷静に言って、菓子折りを取り上げ、持って行く。

「チェッ!」

「貴様、母になっても変わらぬな、」

「ああん?ったりめぇじゃん?
人間嗜好はそうそう変わらねぇっての」

銀時は菓子を頬張りながら言う。

「ごっそさん」

そう言うと、銀時はお茶を飲み干し、立上がる。

「待て、銀時!
話が終わってい無いではないか!」

「ナニよ?
銀四郎くんのオムツ交換の時間なんです」

「そうか、では、後で良い」

桂は仕方無くお茶を飲み、新八は菓子を差し出しお茶を注ぐ。

「桂さん、高杉と、会ったんですか?」

「ああ、」

桂が返事を返すと同時に銀時は

「新八く~ん」

と、言う。

「あ、すみません。余計な事を、」

新八は呟いて立上がり、銀時の元へ行く。

「銀さん、僕がいたら邪魔ですか?」

「んな事ァねぇよ?
ケドさぁ、新八、高杉嫌いだろ?
ちょっ、トゲがあります。
ヅラに直接聞くのアタシがやりますから新八は黙って聞いてるよ~に」

「わかりました」

桂はそんな二人のやり取りを見て見ぬ振りをした。

「しかし、童は起きぬな」

「わっぱじゃ、ありません。
銀四郎くんです。んで?ナニ?
高杉がどうしたの?」

「貴様、どう言う経緯か知らんが、高杉にかまっ娘倶楽部の事を言ったろう」

「ああ、まぁ?
色々とありまして?」

「なんだ、その言い方は?
ナニが、どう、色々とだ!」

「え~?色々は、色々じゃん」

「分からん!」

「んもぅ、いいじゃん。
高杉がかまっ娘倶楽部に飲みに行ったんでしょ?上客じゃねぇの」

「貴様、上客所では無いぞ!
高杉の様子がおかしい!」

「ヤツぁいつもオカシイです」

「オカシイ加減が、」

「アップした~ん?」

ニヤニヤする銀時。

「やはり、貴様、高杉に、気が有るの無いの、言いおったな!」

桂のセリフに新八は目が点になり、銀時は空惚ける。

「惚けるなッ!銀時!」

「か、桂さん、高杉の事?ぇえッ?」

「おい!メガネくん!
ナニを想像している!」

「メガネくんって、いい加減覚えろよ!新八です!
桂さん高杉を好きなんですか?」

「俺は嫌いだッ!」

「ヅラはヤローの事ァ嫌いだよねぇ~。ケドさ、高杉はヅラの事、好きだよ?」

「銀時、貴様!」

「まぁまぁ、聞きなさいよ。
高杉はさぁ子供ン時から、ヅラしか見てないよ?」

「嘘を吐くなヤツは、」

「ホントだってぇ~。
だから、再認識する為に、ヅラに会いに行ったんでしょ?」

「会いにって・・・貴様・・・
毎晩やって来ては、ヤツは・・・
貴様のせいだぞ!」

「ナニよォ~、なんかエロい事でもされたァ~ん?」

「ああ!ヤツは何時からあんな、フシダラな男に・・・」

桂は顔を赤く、尻つぼみにボソボソ呟く。

「ああん?聞えませんがァ?
いいじゃん、別にさぁ。
犯された訳でも無いんでしょ?
ケツやキンタマくれぇ触られたって、大したこと無いって、ねぇ?」

「貴様、何故詳しいのだッ!」

「あん?想像で~す。男のする事だよ?そんくれぇフツー?」

「フツーなのか?」

「そうだよォ?
そんくれぇフツーだからネ」

銀時はニッコリと桂を見詰めた。

「そうか、フツーなのか、」

納得しようとしている桂に新八は声を掛けようとして、銀時に止められる。

[アンタ、騙されてるよ!!
思いっ切り騙されてるよォォォォォォォォ!!]

新八は思った。

銀時はニヤリして新八を見る。

「そうか、フツーならば仕方無い、我慢するとしよう」

「そうだよ、可愛がって貰ってネ」

「ん?」

桂が何か言おうとすると、銀四郎が起きて声をあげる。

「ん~~まぁ~~ぶぅ~~ばぶ」

「アン!」

定春も起きたのを知らせる。

銀時は席を立ち

「おっきしたの~?銀四郎くん?」

そう言いながら定春の懐から銀四郎を抱き上げる。

「おお、起きたな、童」

「銀四郎くん、ヅラ子姐さんですよ~」

「あぶっ」

「ちゃんとご挨拶出来ましたねぇ」

銀時は銀四郎の頭にキスをして桂に銀四郎を渡す。

「ぎ、銀時、俺に童を、」

「あぶぅ~、ま~ぶぅ、きゃう、」

ご機嫌に奇声を上げて銀四郎は桂を見詰めた。

「うぅぶう」

「銀時、返すぞ」

「アラ?銀四郎くんはヅラ子姐さんを 気に入ったみたいだけど?」

「あぽん」

「はい、桂さん」

新八は桂に白湯の入った哺乳瓶を渡す。

「なんだ?」

「あうぅ~」

銀四郎は手を伸ばし哺乳瓶を掴もうとする。

「銀四郎くんに、飲ませて下さいね」

新八はニッコリと言った。

「あ~う~、きゃう」

銀四郎は桂の手から哺乳瓶を取り、ゴクゴク飲み始め、桂はその様子を見詰めている。

「可愛いでしょ?」

「ああ、しかし、見事なまでに、土方に似ているな、」

「あぶぅ」

「なんだ?もう飲み終わったのか?」

桂はカラになった哺乳瓶を取り銀四郎に聞く。

「あぽん」

「アラ、ご機嫌ね」

ニッコリとする銀時を見て銀四郎は笑う。

「きゃう、まぁ~う~、あぽん、あぶ」

「良く喋る童だ」

「うぶぅ、ばぶ」

銀四郎は抗議する。

「わっぱじゃないって、銀四郎くんだものね?」

「あぶ」

「分かった、銀四郎くん。それでいいか?」

「あぽん」

笑う銀四郎に桂は頷く。

「銀さん、そろそろ、夕飯の買い出しに行く時間ですよ」

新八は時計を見て言う。

「ああ、そう?今晩は何にしようか?」

「貴様も出掛けるのか?銀時」

「うん。銀四郎くんの散歩も兼ねてね。さぁおいで、お着替えしようね」

銀時は銀四郎を抱き取り和室に入って行く。

「ヅラは?今晩も仕事?」

「ああ、そうだ」

「そう、んじゃ一緒に出る?」

銀時は着替え終えた銀四郎を抱いて居間に戻り。

「晩ご飯のオカズ考えてよ。
毎ン日、考えるの大変なのよ」

と、言う。

「何故俺が貴様の家の晩メシのオカズを考えねばならんのだ」

「いいじゃん。ネ?」

「あぶっ」

銀四郎は元気良く返事をした。

 

 

銀時達一向は買い物を済ませ、桂は仕事へ、銀時達は万事屋に帰宅する。

 


遊びに行った神楽はまだ帰っていない。

銀時は銀四郎をおぶって台所に立ち、新八もアシスト。

最近では万事屋で夕飯を済ませる事が増えた新八だった。

何故なら、昨年、将軍家御一行さまの花見の旅に、銀時と土方の祝言を兼て、同行した折、土方一人で銀時、新八、神楽、定春の面倒を見ている事を、銀時から聞いた将軍が、神楽や定春の食欲旺盛振りを見て、土方の給料では生活に困るだろうと、取り計らった御陰で、土方の給料が増えたからであった。

一人頭5万円の家族手当が付き、住居手当6万円が付いた。

しかも、土方が万事屋に住み始めた時まで逆上って支給され、京都旅行から帰った、その4月の給料を見た土方は驚き、勘定方に問い合わせた程だった。

そんなこんなで、万事屋の面々は、銀時が大黒柱だった頃より、遥かに裕福で、土方様々ある。

しかも、銀四郎が産まれ、更に手当が増えた土方家だった。

そんな訳で、新八はほとんどの夕飯を万事屋で済ませる。

 

「今日は大江戸マートのお肉特売のタイムセールに間に合って良かったですね」

「うん。でもさぁ、神楽の食欲考えると、足りなかった?」

「イヤ、充分ですよ。
それにしても、神楽ちゃん、どこ行ったんでしょうね?」

「さぁねぇ?」

「あぶぶ」

「そうだねぇ、なんだろねぇ、定春置いて行くなんてねぇ?」

「最近、定春置いて出掛けるの、増えましたよね。
そんな日は必ず遅いんです」

「そうだねぇ。ナニしてんだろ?」

二人はサラダ用の野菜を切り、煮物の為のひじきを下処理する。

今晩は、焼肉サラダ、ひじきの煮物(大豆、人参、こんにゃく、あげ入り)、烏賊の黄金漬け焼き、大根の漬物、玉葱スープ、と、いう献立。

「毎ン日、献立考えるの面倒だよねぇ」

「そうですね。
でも、銀さんが料理するなんて、始めは考えられませんでしたよ」

「アラ?やれば出来るんですケド?」

「ええ、今は知ってますよ、出来るのにやらなかった事も。
でも、考えてみれば、銀さん、僕と初めて会った日、僕ン家で、勝手にデコレーションケーキ作ってましたよね」

「ああ、そんな事もあったね」

「アレから、色々とありましたね」

「うん。ってナニ?何の回想?
まさか、侍の国・・・なんて、一番最初の、アバンから始める気?」

「アレ?」

新八は思った。

いつの間に、こんな事に?

「いや~、つい、昔を懐かしんでしまいました」

「や~ねぇ?
新八アタシよか十も若いのに」

「ですよねぇ?」

「あぶぶ」

三人は笑った。

 

―ガラリ―

「おう、帰ったぞ」

土方の帰宅。

「お帰り~」

銀時は出迎えて

「ね、どっかで神楽見掛けなかった?」

と、聞く。

「イヤ?帰ってねぇのか?」

「そうなんだよね、どこ行ってんだろ?」

「電話したのか?」

「うん。出ないんだよ」

土方は携帯取り出し

「俺だ。パトロール車両に、ウチの神楽見掛けなかったか、聞いてくれ」

「ああ、そうか。
見掛けたら、ウチに連れて来てくれ、ああ、頼む」

真選組の指令室に問い合わせた。

「いないの?」

「ああ、見掛けたヤツぁ居ねぇ」

「もう、」

銀時は今迄、一度も神楽の事を心配した事はなかった。

戦闘民族である夜兎族の神楽は強い。

充分理解している。

だが、女なのだ。

女の身が、不利になる時がある事を重々、身を持って知った銀時は、神楽の身を案じる様になっていた。

「しかし、どうした?
オメーが神楽の心配なんざ、した事ァねぇだろ」

「うん、ケドさぁ、あの子も女だし」

「そうだな、んじゃ、一回りして来るか」

「いいよ、アタシが見て来るから」

草履を突っ掛ける銀時の手を掴み

「イヤ、俺が行く。
オメーも女なんだぜ」

「ああ、」

見詰める銀時を抱き寄せて、土方は背中を擦る。

「志村」

「はい」

新八は銀四郎を抱っこして玄関に行く。

「一緒に来い」

「わかりました」

銀時に銀四郎を渡し、土方は銀四郎の頭を撫でる。

「もう少し待ってろ」

「あぽん」

土方は笑い銀四郎の頭にキスをして

「待ってろ。心配いらねぇよ」

と、銀時の頬を撫でた。

「じゃあな」

「いってきます」

「頼んだよ」

「あぶっ」

銀時は銀四郎を抱き締めた。

「あぶぶ、んぶぅ」

銀四郎は銀時を慰める様に言う。

 

 

 

 

 


その頃、神楽は映画”ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ娘”を見て感動の涙を流し、頃合良く空いた腹を満していた。

「ジミー、唐揚げおかわりヨ」

「はいよ」

「あと、ご飯とスープもアル」

ジミーこと、真選組・監察方・山崎退は店員を呼んで

「唐揚げ、三人前と、ご飯、特盛り。
二人前おかわり、それとォ、」

山崎は手際良く神楽好みの品を注文していった。

「グラさん、他は?」

「後で、いいアル」

カツカツご飯を掻き込む神楽。

「いつ見ても、良い食いっぷりだよね」

「そうアルか?コレ、フツーね」

「それでフツーって、副長、大変だね」

「そうアル。土方かわいそアル」

「イヤ、かわいそうじゃないよ?
大変だけどね」

山崎は神楽に比べ控え目に食事をしていた。

「でもォ、副長って、人が良いよねぇ」

「土方、良い人、銀ちゃん幸せヨ。
銀四郎可愛いアルよ」

「そうだね、」

 

 

 

 


その頃土方は、かぶき町を新八と、神楽を探し歩いていた。

「土方さん、いませんね、」

「ああ、ちょっと電話してみるか」

土方は真選組に連絡し、神楽に関する情報は無しと知り、電話を切る。

「ったく、どこ行きやがった」

「もう、戻りましょう」

「ああ、」

そう言いながら土方はもう一度電話をかけた。

 


♪~♪~♪~♪~

山崎の携帯が鳴る。

「はい、はい」

『おう、山崎、』

「あ、副長ォ、どうしたんですか?」

『オメー、ウチの神楽知らねぇか?』

「グラさん?」

『ああ・・・ソレだよ。
あのヤロー何の連絡も無しで出掛けやがって、子供が出歩って良い時間じゃあねぇのによ、』

「あ、」

と、山崎は時計を見た。

「ジミー、デザートは?アイスとプリンアラモード食べたいアル!」

『山崎ぃぃぃ!!
テメェッ!!
神楽と一緒ったァ、どう言う事ったァァァ!!!』

神楽の声を電話越しに聞き付けた土方は怒鳴る。

「ひいぃぃぃぃぃッ!!」

『テメェッ!どこにいやがるッ!!
返答次第で、ブッ殺すッ!!!』

「ひいぃぃぃぃッ!!」

 


新八は悲鳴の漏れ聞えるすぐ近くの店を見る。

怒鳴り捲りの土方の肩を叩き

「土方さん、」

「ああッ?」

険悪な表情の土方に

「ここです。ホラ、悲鳴、」

と、冷静に食事処を指す。

「あんのヤロー!なんで神楽とメシなんぞ食ってやがる!」

―ガラッ!!―

強引な扉の開け方に、客達は入口を見る。

ズカズカ入り来る土方を見て山崎は更に悲鳴をあげた。


「山崎ぃぃぃぃッ!!」

「副長ォォォォ!!
勘弁して下さいぃぃ!」

土下座している山崎を見ながら神楽はデザートを頬張る。

「神楽ちゃん。
だめだよ、ちゃんと電話出なきゃ。
銀さん心配してたよ」

土方にボコ殴りにされている山崎を無視して新八は神楽に言う。

「電話?気付かなかったヨ。
銀ちゃん心配してたアルか。ごめんヨ」

「もう、帰るよ?」

「分かったアル。
じゃあなジミー、またアルよ~」

神楽は殴られ続ける山崎にそう言うと、新八と店を出て行き

「土方さん、先に帰りますよ~」

と、新八は告げる。

「ああ、分かった。
山崎、テメェッ!
何時から神楽とメシなんぞ食う間柄になってやがるッ!」

「副長ォ、殴る前に聞いて下さいよォ」

「ああ?テメェ、自分よか十は年下の少女と、ああ?
淫行でしょっぴくぞッ!」

「淫行って、映画見て、メシ食ってただけだろォ?
淫らな事なんて、何も、してねぇよッ!」

「ああん?
なんだとコルアァッ!」

「ああッ!
ごめんなさいぃぃッ!!」

土下座しながら

「ご飯だけですッ!

それ以上何もありませんッ!」

と、平謝りの山崎。

「当り前ぇだッ!」

土方は鼻息も荒く言う。

「どうせタカられてんだろうが、テメェ、ありゃあ未成年なんだからよ、ちゃんと連絡入れろ!」

「はいッ!」

「テメェのせいで、オメー、銀時ゃあ、エラい心配したんだぞ、」

「え?旦那が?」

「ああ、質の悪いヤローが多い世の中だからよ、アレでも一応、女だしな、テメェ、次に神楽誘う時ゃあ、
ちゃんと連絡入れろ。いいな?」

「はい。わかりました。
すみません。副長ォ」

「分かりゃ良い」

土方はそう言うと、食事の伝票を掴んで会計に向かう。

「いいです。俺が払いますから」

「ああん?いいんだよ」

 

土方は支払いを済ませ店を出る。

「ありがとうございました~」

後を追って出て来た山崎は

「副長ォすみませんでした、」

と、言い掛けて

「山崎、オメー、何時から神楽にタカられてる?」

止められる。

「え?イヤ、タカられてませんよ?」

「嘘吐くんじゃねぇ」

「嘘じゃないですよォ。
デートですから」

「テメェ、14の娘とデートって、ナニ考えてんだ?ああッ?」

「ナニって、グラさんと居ると楽しいですし、あの食欲旺盛な所見てると、なんか、面白いし、食べさせ甲斐あるって言うか、」

「ああ、オメーも、大概どMだな。
まぁいい、エロい事ァするんじゃねぇぞ」

「しませんよォ~、」

山崎は、ソレは有り得ないと、いった口調で笑う。

「ならいいがよ。
デートの邪魔して悪かったな」

「いえ、じゃあ副長ォおやすみなさい。ご馳走さまでしたァ」

山崎は頭を下げ、土方は頷く。

万事屋へ帰る道すがら、土方は考える。

[山崎と神楽の間にエロい事なんざ、有り得ねぇな、確かに。
山崎如きに神楽が押し倒される事もねぇしな。
つーか、ブッ殺されんだろ。
神楽の本命は銀時だったしな。
まぁ、俺が取っちまったケド]

土方は銜え煙草で万事屋へ向かった。