銀色の夢【かぶき町子育て日記 銀時四郎くんと一緒】 肆

 

 

―かまっ娘倶楽部―

―男も女も遊びに来てね―


♪べんべん♪べけべん♪べん♪べけべん♪べん♪


三味線と太鼓のリズムに合せ、舞台で踊る、踊り子。

桂は不快に思いながらも、笑顔で接客をしていた。

喧騒な店内、酒と煙草と白粉の匂い。

「まぁ、呑めよ」

高杉は桂の肩を引き寄せニヤリする。

「どうした?
今日は、随分と、静かじゃねぇか。
腹でも下したか?」

「そんな訳なかろう」

「んじゃ呑めよ」

高杉は桂の盃を満す。

「ああ、飲もう」

桂は盃を傾け、酒を呷る。

「いい呑みっ振りじゃねぇか、いいぜ、ヅラ」

「ヅラじゃない、桂だ」

「分かってるよ、ヅラ」

「分かっていないだろ!
何度そのニックネームで呼ぶなと言った事か!
ヅラじゃない!今はヅラ子だ!」

そう言い、桂は満された盃を次々、空けていく。

「ヅラ子ちゃ~ん、ご指名よ~」

アズミが呼びに来る。

「ああ、分かった」

「2番テーブルお願いねぇ」

「なんだ、行くのかよ」

「ご指名だからな」

立上がる桂の手を掴み。

「戻って来いよ」

と、高杉は言う。

「分からん」

その答えに高杉は桂の腕に、噛み付く。

「高杉、痛いぞ」

桂は噛まれたままで言う。

「分かったよ・・・もう一度指名しろ・・・」

高杉は口を放し。

「待ってるからよ」

と、笑った。

「ったく、」

桂は高杉の噛んだ腕を擦りながら、指名席に座った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「う・・・うん・・・」

桂はシカメ面、眉間にシワ寄せ、薄目を開ける。

「どこ・・・だ・・・」

桂はもどかし気に目を擦り天井を見上げる。

見覚えの無い天井、壁、夜具、何故半裸なのか、考える。

「おい、何をしている、高杉?」

桂は半身を起こし、股間に顔を埋める高杉を呼ぶ。

[なんて事を・・・]

桂がそう思う間に、高杉は男根をねぶる。

舐め、擦り、吸い上げる。

「ぅうん・・・高杉・・・ぉい・・・晋助・・・
アァ・・・ィイッ・・・やめ・・・」

執拗にねぶられ、思わず喘ぐ。

[何故、高杉は、俺の、
キンタマをねぶる?アァ]

高杉の手が、尻の丸みを撫で、揉み、尻の穴をなぞる。

「やっ、めろ、高杉」

「クックックッ、やめろ?
キンタマ固くして、何言うよ・・・ヅラ、気持ち良いだろ?」

「な、何を、アァ」

高杉はなぞる指先を尻の穴に差し入れた。

「やめろ、高杉、」

桂は尻の中を蠢く指先に、得も言われぬ陶酔感を覚えた。

「ば、ばか晋助、」

高杉は笑いながら桂の固く反り返り、透明の汁を滴らす男根を見詰めた。

「クックックッ、面白ぇ、滴ってるぜ、イキてぇんじゃねぇのかよ?」

「ンアッ、指を、抜け、ばか者、」

「ああ?言ってる事と、違くねぇか?」

高杉はニヤリしながら差し入れた指を蠢かす。

「ああぁ、晋助・・・
何故この様な事を・・・」

「何故じゃねぇよ、やりてぇからさ。
なぁ、ヅラ、俺ァ、昔一緒に戦場を駆け回った頃、オメーを抱こう、なんざ、思った事ァねぇ」

「では、何故、今になって・・・」

「さぁなぁ、」

「貴様、銀時が駄目だから、俺と言う訳か・・・」

「ああ?んな訳ゃあるめぇよ。
単純にオメーが欲しいだけだ」

高杉は笑い、桂の長い黒髪を掴んで顔を上げさせる。

「やめろ、晋助、」

高杉は強引に桂の唇に噛み付く様な口付けをした。

「貴様は獣か、食い付くヤツがいるか、下手くそが」

桂は身体を起こし。

「とにかく、指を抜け。
貴様、接吻もした事が無いのか」

桂は掻き乱された髪を振り高杉を睨む。

「おいおい、俺が女遊びもした事が無ぇってのか?」

「俺は女ではない」

「そうか?」

「ああ、貴様、俺を女にしたいのか?」

「イヤ、んな事ァ考えちゃいねぇ」

「では、何故銀時を女にしたのだ」

「ああ、ありゃあ、銀時を何とか手に入れ様かと、考えての事だ」

「なんだ、貴様、本心はそれか。
貴様は俺では無く、銀時が欲しいのだな?
まぁ、無駄な事だが」

「ああ、銀時の事ァ、どうだって良いんだよ。
どうにも出来ねぇ。
しつけぇ狗がくっ付いてるからよ」

「俺は貴様が嫌いだ。
昔も、今もな」

「ああ、そりゃ聞いた。
俺がオメーを好きかって言ったら、良く分からねぇ」

「好きかも分からぬのに、貴様は俺を女にしたいのか?馬鹿者!」

桂は身体を離し、高杉に頭突きをした。

「ッ!テェ!テメェ、揃いも揃って、同じ事しやがる」

「フンッ!
貴様の様な馬鹿者には頭突きで充分だ」

桂はそう言うと、乱れた着物を直し、立ち上がる。

「貴様に犯らせる身体は生憎と持ち合わせいないのでな」

「テメェ、逃げるのか!」

「逃げる?
フッ、貴様に付き合う道理が無い以上、俺は帰らせて貰う」

桂は何事も無かった顔をして、何処とも分からぬ部屋を後にした。

「なんだ、かぶき町か」

桂はフラリ町中に消え、宿屋の部屋に取り残された高杉は一人愚痴垂れていた。

 

 

 

 

 

 

フラフラ歩く内に桂は万事屋の前に立っていた。

「流石に、訪ねる訳にはいかんな」

時刻は深夜、二時を回り、赤児のいる銀時は眠りに就いている。

桂は万事屋の前から歩き去った。

 

 

 

 

 

 

 

ピンポーン
ピンポーン

「は~い」

新八はニコヤカに出る。

―ガラリ―

「はい。桂さん。こんにちは」

「こんにちは。新八くん。
銀時はいるか?」

「今、神楽ちゃんと散歩がてら買い物に行っています」

「そうか」

「どうぞ、二十分くらいで戻りますよ」

新八はニコヤカに言って桂を通した。

「悩み事ですか?眉間にシワ、」

新八はそう言ってお茶を出し、桂は菓子折りを差し出す。

「いつもありがとうございます」

受け取った菓子折りを開けて、新八は煎餅の入った菓子入れに、桂の持って来た菓子を足す。

「新八くんは、悩みなどあるのか?」

「ええ、まぁ、多少は、」

「そうか。どの様な悩みだ。
恋愛問題か?やはり彼女が欲しいとか」

「まぁ、彼女は別に・・・
僕は、道場の再建を、この調子じゃ何十年掛かるかわかりませが、」

「そうか。道場か、この時世では、剣を志す者も少ないしな、」

「ええ、でも、諦めません」

新八の笑顔に桂も笑顔を向けた。

「やはり、帰るとしよう、用を思い出した」

桂は席を立ち、新八は慌てる。

「すいません。
僕何か、気に触る事を言いましたか?」

「ああ、違うのだ。実を言えば、銀時に愚痴を零しに来たのだが。
しかし、俺の悩みなど、悩みの内に入らぬと、気付いたのだ」

桂は笑い、新八の肩を叩く。

「新八くん、頑張れ!」

「では、」

桂は満足気に笑い、万事屋を後にした。

「桂さん?」

一人残った新八には、何が何だか、さっぱり分らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


―11月―

 

―万事屋―


―ガラリ―

「銀時、いるかい?」

「あ~ナ~ニ~?」

奥の和室から返事がありお登勢は座敷に上がる。

「なんだい?昼寝かい」

「うん。ナニ?どうかした?」

銀時は銀四郎に毛布を掛け起き上がる。

「アンタに相談したい事があってねぇ」

お登勢は考えながら言う。

「んじゃ、向こうで。お茶淹れるよ」

居間に移り銀時はお茶を出す。

「何の相談?金ならねぇよ?」

「んなの知ってるよ。
誰がアンタに金の相談なんかするかい」

「んじゃナニ?」

「裏の土地が売りに出たからさ、買ってここ、建直そうかと思うんだよ」

「ぇえッ?建直し?って、ちょっ、ウチらどうすんの?
万事屋、続けるよ?家なき子んなっちゃうじゃん!
アタシら親子三人+神楽&定春は?
路頭に迷えっての?」

「ゴチャゴチャ、うるせぇ!!
人の話は最後迄聞けってんだよ!」

お登勢の怒鳴り声に銀時は怒鳴り返す。

「聞きゃいいんだろ?聞きます!」

「いいかい?アタシももう年だ。
何時お迎えが来るか分からないだろ?
だからって、アタシゃキャサリンやタマを見捨てる訳にゃあ行かないからね」

「大丈夫だよォ。
まだまだお迎えなんざ来やしないって」

「だからテメェは黙って聞けって言ってんだろ!
話の腰を折るんじゃないよ!
何話てたのか、分かんなくなっちまったじゃないか!」

「もうボケが?」

銀時はまた余計な口を挟み、お登勢に殴られた。

「とにかく、ここは建直すよ。
一階は店、広くなるからね、テナントとして貸出しゃあ良いだろ。
二階はアタシん家、キャサリンとタマも一緒さ。
三階は万事屋、そこに二~三部屋作って神楽の部屋にすりゃあ良い。
四階はアンタら親子が住みな」

「え?出て行かなくていいの?」

「当り前だろ?アンタは・・・
アタシの子みたいなモンだからさ」

「ババァ、」

「ちょいと!そこババァ?
普通そこババァったァ言わねぇだろ!」

「ああ、そうねぇ。
んじゃナニ?アレか?バァサンか?」

「全然変わらねぇだろォ!オイぃッ!」

再びお登勢に殴られた。

「なんて呼ばれたいんだよぉ、アレか?母上か?お袋か?
それともナニか?おかあさんか?
イヤイヤ、江戸っ子らしく、今日からおっかさんでお願いします!」

「ナニがおっかさんだい。
んな事ァ言わなくっていいよ気色悪ぃ!
ババァのまんまで構わないよ。
でだ、相談ってのはね、アンタに新な土地、建物の権利所有者になって貰おうかと思ってね。
良い話だろ?銀時」

驚く銀時。

「はァ?俺?」

「俺じゃねぇよ!アタシだろ?」

「はい・・・すいません」

「行く行くはアンタに権利やるつもりだったんだよ。アンタが嫁もらったらってさ。
なのに、どう言う訳か、アンタが嫁になっちまったじゃないか」

「あ・・・」

「アタシが死んだらさ、キャサリンやタマの面倒、みてやっておくれよ」

「んな事ァ、言われ無くてもみるに決まってんだろ。
つーか、まだまだくたばらねぇだろ。殺しても死なねぇって、ナニ縁起でもねぇ事言ってんだよ」

銀時はボリボリ頭を掻く。

「ナニブツブツ言ってんだよ。
まぁ、さ、何にも言わなくてもアンタが面倒見ない訳ゃ無いって、分かっちゃいたけどさ、他に頼む人もいないしね」

「まぁねぇ・・・」

「旦那や銀四郎の世話もあるし、この先も子供が増えるかもしれないし、アンタも何かと大変だろけどね。
万事屋の事も、新八に神楽、定春まで、さアンタは後から後から色々背負い込んで、その序でっちゃあ何だけどさ、二人を頼むよ」

「分かってるってぇ、んな事ァ言わなくてもさぁ。
今更、天人や絡繰りの一人や二人増えた所で屁でもねぇってぇの」

「ま、そう言う所がアンタの良い所なんだけどね」

「なんかものっそい良い人みたい?」

銀時は顔を赤くしてソッポ向く。

「ま、アンタの人の良い所に付込んで悪いんだけどね、二人を頼む変わりにアタシの持ってるモンを譲ろうかとね」

「いらねぇ、って言いたい所だけど、有り難くいただきます。
先の事考えたらさ、収入源はあった方が良いモンね。
考えたらさ、アタシの背負い込んだお荷物はさぁ、み~んな、トシが面倒見る様なモンじゃん?
そりゃ、幾らナンでも悪ぃよねぇ。
ありがとうございます。
有効的に使わせていただきます」

銀時は深々頭を下げる。

「その事ァ、アタシも思ってたんだよ。詳しい事ァ後で話すよ。
近々、建直すからね、そのつもりでいとくれ。
悪いけど、アンタらは、当分何処に仮住まいしとくれ」

「ああ、トシに言っておくよ。
あ、真選組に置いて貰おう。
そうすりゃ家賃タダだし」

「ちゃっかりしてるよ。
んじゃ、そう言う事だからさ、旦那に話といておくれよ。いいね」

「わかった。ありがとう。おっかさん」

銀時はニッコリ言う。

「やっぱ、気色悪ぃねぇ」

お登勢はそう言うと、サッと万事屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


帰宅した土方に銀時は昼間お登勢と話した事を告げる。

「お登勢さんがここ、建直すんだって。その間、行く所無いじゃん?
真選組の屯所に住んでいい?」

「そりゃ、俺の一存じゃ決められねぇな」

「え~?んじゃ誰に許可貰えば良い?」

「近藤さんか?」

「ならOKじゃん」

「まぁなぁ・・・イヤ、やっぱ、何処、借りた方が良くねぇか?」

「なんでぇ~?
余計なお金遣いたく無いじゃん。
屯所ならトシもギリ迄寝てられるし?家賃ナシじゃんね?
新築になったらさぁ、家賃上がるモンだよ?」

「まぁな。オメーは知らねぇだろうが、幹部連中は別宅持てるんだぜ?」

「えっ?そうなの?経費で?」

「ああ、屯所の近くで妾宅扱いだけどな」

「妾宅?妾って事?
アンタ、本妻アタシじゃねぇの!?
つーか、アタシは妾なのか?
なんだそりゃ!?」

「オイ銀時、ま、落ち着けよ。
俺の本妻はオメーしか居ねぇよ。
な?銀時。
屯所に仮住まいして良いかは、近藤さんに聞いとくからよ」

「うん。でもさぁ、真選組の幹部連中に妾持つ様な甲斐性あるヤツなんか居んの?まさか、アンタ、」

「オイオイ、勘弁してくれよ。
俺ァオメーだけで手一杯だってぇの」

「ホントぉ~?」

「ホントだよ。つー事で、風呂入らせろ上がったら証明してみせっからな。オメーだけだって」

土方は笑って銀時に口付けた。

 

 

 

 

 

 

「建直し?それじゃ万事屋、お休みですか?」

「そ。つーか、最近じゃ、年中休みみたいなモンだけどぉ」

「雇主が言うなよ。
それで、建直しの間は何処に住むんですか?」

「ん~、一応、トシに頼んで、屯所に住まわせて貰おうかとね。はい、出来た」

銀時は銀四郎に折り紙のペンギンを作って渡す。

「えり~」

銀四郎は真っ白な折り紙のペンギンをエリザベスと言って笑う。

「屯所ですか?
僕ん家なら部屋数沢山ありますよ?」

「ああ、そうだよねぇ。あ、やっぱダメお妙に金取られそうだモン」

「ああ・・・確かに、」

「つー事で、三つ月はお休みです。
一応、携帯に依頼がありゃ、受けるケドね」

「ホントですか?」

「うん。新八も時々は来るだろ?」

「ええ」

「引っ越し手伝ってくれる?」

「はい」

「しんちゃ~ん、えり~」

銀四郎は真っ白なペンギンを新八に見せた。

「ホントだね。銀四郎くんは大きくて白い動物が好きだね」

「ちゅき~」

銀四郎は楽しそうに燥ぎそれを銀時は幸せそうに見詰めた。